チューベローズ

チューベローズ（月下香）

チューベローズ（月下香、学名: Polianthes tuberosa）は、リュウゼツラン亜科に属する多年草です。その甘く濃厚な香りで知られ、ゲッカコウ（月下香）、オランダズイセン（和蘭水仙）とも呼ばれます。学名の種小名である tuberosa は、ラテン語で「ふくらんだ、塊根状の」という意味を持ち、球根を形成することに由来します。「チューベローズ」という名前は、その英語読みからきています。

特徴

原産地はメキシコで、同属の植物は12種存在します。晩春に鱗茎から発芽し、披針形の葉を展開します。根生葉が数枚、茎を抱く葉が十枚前後あります。草丈は1mほどに成長し、8月頃に白い6弁の花を20～30輪ほど穂状に咲かせます。花穂は約45cmに達し、その香りは非常に豊かで、複雑かつエキゾチックな甘いフローラル系です。特に夜間になると香りが強くなります。園芸品種としては八重咲きのものが多く見られますが、香りの強さでは一重咲きのものが優れています。

かつて、李香蘭や渡辺はま子が歌いヒットした中国曲「夜来香」の花がチューベローズであると言われたことがありますが、実際には別の植物であり、月下香（げっかこう）という和名も存在しましたが、現在ではあまり使われていません。抽出物は香水のトップノートとして利用されることが多く、ハワイや熱帯アジアなどで広く栽培されています。

ヴィクトリア朝時代のハワイでは、葬儀用の花として使用されていました。その後もレイや宗教的な儀式に用いられています。

栽培

開花させるためには、球根が30g以上であることが望ましいです。そのため、できるだけ大きく、病害虫の被害がない球根を選ぶようにしましょう。比較的丈夫な植物であり、花を咲かせるだけであれば、水はけと日当たりの良い場所で十分に育ちます。株間は30cm程度空け、球根に10cm程度の土がかぶるように植え付けます。花の後に塊茎が分球しますが、八丈島など冬の訪れが遅い地域を除き、球根が十分に成長する前に冬が来てしまうため、翌年も栽培したい場合は、新しい球根を購入する方が確実です。

花言葉

チューベローズの花言葉は、その甘い香りにちなんだものが多く、「危険な快楽」「甘美」「官能」などがあります。一方で、「冒険」や「幸福」といったポジティブな意味も持ち合わせています。

香水

香水の世界では、その濃厚で甘い香りが非常に重宝されています。単独で使用されることは少なく、他の花の香りと組み合わせて、香りに深みと奥行きを与える役割を担うことが多いです。代表的な香水としては、ディプティックの「ドソン」や、フレデリック・マルの「カーナル フラワー」などがあります。

まとめ

チューベローズ（月下香）は、その美しい花姿と甘美な香りで、多くの人々を魅了する植物です。園芸品種も豊富で、初心者でも比較的育てやすいことから、ガーデニング愛好家にも人気があります。香水やレイなど、様々な用途で利用されており、その魅力は多岐にわたります。

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