チロリン村とくるみの木

チロリン村とくるみの木

『チロリン村とくるみの木』は、1956年4月14日から1964年4月3日までNHKで放送されていた人形劇です。番組は全812回放送され、そのうち1回は未放送でした。1963年にはカラー放送も開始され、視聴者に新たな体験を提供しました。

この人形劇は、NHKの人形劇シリーズとしては2作目にあたります。最初は週に1回のペースで放送されていましたが、途中からは帯番組として日々放送されるようになりました。原作はイタリアの童話『チポリーノの冒険』ですが、当時の著作権の問題から、作品を元にした日本独自の野菜の物語に仕上げられました。

放送時にはVTR技術が導入されておらず、全ての人形の動きは生放送中に演じられました。音声部分だけは事前に録音されたため、製作には特有の技術が求められました。さらに、当時の人形は手を頭の上に上げた状態で動かすものであり、太陽の光を遮る操作棒は使用されていませんでした。このため、出演者は長時間手を高く上げたまま人形を操る必要があり、相当な苦労を強いられたことが伺えます。

物語の舞台は、チロリン村です。ここには「ピーナッツのピー子」、「タマネギのトン平」、「クルミのクル子」といった野菜たちが住んでおり、彼らは擬人化された存在です。さらに、村には小動物たちも一緒に暮らしており、時には「もぐらのモグモグ」や「ねずみのタコチュー」なども登場します。しかし、物語の中では、貧しい野菜族と裕福な果物族との間で様々な対立が繰り広げられ、視聴者に笑いとドラマを提供しました。

また、物語が進むにつれて、「コウモリのブラックバット」といった悪役や、憎めないながらもひょうきんな「イタチのプー助」や「ハラペコ熊のペコポン」といったキャラクターも加わり、その展開はより多彩になりました。

放送される時間帯はいずれも日本標準時で、視聴者は日々異なるエピソードを楽しむことができました。 この番組は、恒松恭助による脚本のもと、姫田忠義の演出、宇野誠一郎の音楽が特徴で、アニメーションにも似た人形操作が行われていました。さらに、その特色ある主題歌「チロリン村とくるみの木」は、ペギー葉山の歌声で多くの人に親しまれています。

放送当時の映像は、第545回や第811回などが現在も現存しており、モノクロ版が中心ですが、特に1963年の第811回と最終回に関する情報は貴重です。 また、自治省外郭団体によって制作された16ミリ映画『チロリン村の村長選挙』も存在し、村長選挙を巡るストーリーは多くの視聴者に印象深く残っていることでしょう。

この作品は、放送後もDVDとして発売されており、若تمなクリエイターたちへのインタビューや作品の背景を知る良い機会となっています。2014年には『NHKアーカイブス』で特集が組まれ、過去の名場面や制作現場の模様も紹介されました。

また関連文献として、恒松恭助の書籍が数冊出版されており、これらはNHKでの放送の完全記録とも言える資料としての価値があります。『チロリン村とくるみの木』は、放送史に残る作品であり、今なお多くの人々の心に残り続けています。

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