チロルの挽歌

チロルの挽歌

『チロルの挽歌』は、1992年4月にNHK総合テレビで放送されたドラマで、山田太一が脚本を手がけ、高倉健と大原麗子のダブル主演によるものです。全2回、各回90分の構成で放送されたこのドラマは、第29回ギャラクシー賞奨励賞と第32回日本テレビ技術賞（録音）を受賞するなど、高い評価を得ました。

あらすじ

舞台は、かつて炭鉱で賑わっていたが、閉山が相次ぎ過疎化が進む北海道納布加野敷市。市長の山縣は、関東電鉄からの資本参加を得て、新たなテーマパーク「チロリアンワールド」の建設を進め、街に活気を取り戻そうと奮闘しています。

関東電鉄の技術部長である立石は、チロリアンワールドの建設と運営に携わるために引き受けた単身赴任。彼には、過去に自殺を止めた因縁がある菊川と、かつて駆け落ちした妻志津江がいることが判明します。運命的な再会が彼に新たな試練をもたらすことになります。

立石は自らの思いを胸に北海道に向かい、事務的な仕事をこなす傍ら、志津江との再会を果たします。しかし、志津江は菊川と共に生活しており、三人の間には複雑な感情が渦巻いています。立石は、チロリアンワールドの完成を手に入れる一方で、妻に対する未練が断ち切れずにいます。

やがて、登場人物たちはそれぞれの問題を抱えながらも、新たな生活と未来に向けて模索していくことになります。立石は、チロリアンワールドの開業に向けて努力しつつ、志津江と菊川との関係に悩み、彼自身の心情と向き合わねばなりません。

登場人物

立石実郎（高倉健）

技術部長として単身赴任し、テーマパークの建設に関わる立石。家庭への配慮は薄いが、根は優しい性格であり、未練を抱えた彼の葛藤が物語の中心となります。

立石志津江（大原麗子）

立石の妻で、男に不満を抱く彼女は菊川と駆け落ちし、納布加野敷で衣料品店を経営しています。立石との再会後、様々な感情が交錯します。

菊川隆彦（杉浦直樹）

過去の悲劇で自ら命を絶とうとしていた菊川は、立石の赴任に対して怯え、逃げ回る日々を送りますが、立石との対峙を禁じ得ません。

山縣元夫（河原崎長一郎）

市長としてチロリアンワールド建設を推進する彼は、立石のことを心配し、状況を打開しようと奮闘します。

背景と評価

このドラマの撮影は1991年の夏と1992年の冬に行われ、架空の納布加野敷市として北の国からの再生の希望が描かれます。実際には北海道芦別市でロケが行われており、当地の支援も受けています。また、作品内のチロリアンワールドは、後の「カナディアンワールド」のモデルとなりました。

大原麗子は本作を生涯の代表作と位置づけており、彼女の愛着は非常に大きかったといいます。実際にDVDプレイヤーにはこの作品が入ったままだったというエピソードもあるほどです。さらには、阿部寛が本作の出演を志願したことも、後年の彼のキャリアに影響を与えました。

『チロルの挽歌』は、登場人物の深い人間ドラマと、地域再生をテーマにした感動的なストーリーで、多くの視聴者の心を掴んだ作品です。

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