チーズバエ

チーズバエ（Piophila casei）について

チーズバエは、ハエ目チーズバエ科に分類される昆虫です。体長3.5ミリメートルほどの小さなハエで、光沢のある黒色の外観をしています。複眼の間隔が狭く、頭部の下面、触角、脚は黄色いのが特徴です。

幼虫の特徴

チーズバエの幼虫は、成熟すると体長が8ミリメートル程度になります。前気門には8から10個の指状の突起があり、第4節から第12節にかけては節の下部に小さな棘があります。この幼虫は、危険を感じると尾部を口で咥えて体を環状に曲げ、20センチメートルほど跳躍する能力を持っています。この特徴から、英語では「cheese skipper（チーズの跳ねるもの）」とも呼ばれています。

生態

チーズバエは、チーズや燻製肉などの高タンパク食品や動物の死骸などに発生します。27℃の環境下で栄養が十分にある場合、卵から成虫になるまで約16日かかります。メスは一度に59個から133個の卵を産み、成虫の寿命はオスが約5.4日、メスが約4.3日と短命です。

チーズバエは、ヨーロッパや北アメリカに広く分布していますが、日本でも輸入された牛皮に付着して侵入した例が確認されています。

人間との関わり

チーズバエは、食品を扱う店舗や家庭で衛生害虫として問題になることがあります。特に欧米では、食品店や牛乳店での被害が多いようです。誤ってチーズバエの幼虫を摂取してしまうと、消化器官内で生き延び、蠅蛆症（ようそしょう）を引き起こす可能性があります。蠅蛆症は、幼虫が体内で寄生し、様々な症状を引き起こす病気です。

一方で、チーズバエの幼虫は、サルデーニャで作られる伝統的なチーズ「カース・マルツゥ」の製造に利用されています。このチーズは、幼虫によって発酵・熟成される独特の風味を持ちます。

まとめ

チーズバエは、小さいながらも人々の生活に影響を与える昆虫です。衛生管理を徹底し、食品への侵入を防ぐことが重要です。また、特定の文化圏では、チーズの製造に利用されるという興味深い一面も持っています。

参考資料

* 松崎沙和子、武衛和雄『都市害虫百科（普及版）』朝倉書店、2012年4月25日、118-119頁。ISBN 978-4-254-64040-3。

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