ツァヒアギーン・エルベグドルジ

ツァヒアギーン・エルベグドルジ：モンゴルの民主化を牽引した政治家

ツァヒアギーン・エルベグドルジ（Tsakhiagiin Elbegdorj）は、1963年3月30日生まれ。モンゴルの民主化運動の指導者の一人であり、首相を2度、そしてモンゴル国大統領を務めた人物です。特に、モンゴル人民革命党に所属した経験がない人物として初の大統領となったことで知られています。

生い立ちと教育

エルベグドルジは、遊牧民の家庭に8人兄弟の末子として生まれました。幼少期をホブド県で過ごした後、オルホン県エルデネトに移り、地元の高校を卒業。その後、エルデネト鉱業で工員として働きました。

1982年から1983年まで兵役に就き、その間にモンゴル人民軍の機関紙に詩を投稿したことがきっかけで、ソビエト連邦のリヴォフ軍事政治大学への留学の機会を得ます。1988年にはジャーナリズムの学位を取得して卒業しました。

民主化運動への参加

ソ連留学中にミハイル・ゴルバチョフの改革に触発されたエルベグドルジは、帰国後、『赤い星』の記者として活動する傍ら、民主化運動に身を投じます。1989年12月10日には、ウランバートルの青年文化会館前広場での集会で、反体制勢力「モンゴル民主同盟」の結成を宣言。「民主化運動の13人」の一人として、モンゴルの民主化を主導しました。

この民主化運動の結果、1990年にモンゴル人民革命党による一党独裁体制が崩壊。エルベグドルジ自身も人民大会議代議員に選出され、1992年の新憲法制定に貢献しました。

政治家としてのキャリア

1992年、第1期国民大会議議員に選出され、その後も議員として活躍。1996年には国民大会議副議長に就任しますが、1998年には首相に指名されるも、金融政策の失敗の責任を取り辞任。

その後、アメリカに留学し、ハーバード大学ケネディスクールを卒業。国連ミレニアム開発目標のプロジェクト・アドバイザーも務めました。

2004年には再び首相に就任しますが、連立与党との関係悪化により2006年に更迭されます。2008年には再び国民大会議議員に選出。

2009年には民主党の推薦を受け大統領選挙に出馬し、当選。2013年の大統領選挙でも再選を果たしました。

大統領としての活動

大統領就任後、エルベグドルジは汚職の根絶を訴えるとともに、外交面では中国への過度な依存を避けるため、「第3の隣国」として日本やアメリカなどの西側諸国との関係を強化する政策を推進しました。また、2011年には欧州安全保障協力機構への加盟を申請しています。

自由民主主義と人権を強く支持し、2013年には北朝鮮を訪問し、自由と人権の尊重を訴える講演を行いました。一方で、中国とロシアが主導する上海協力機構に準加盟し、3カ国サミットを提案するなど、近隣諸国との関係も重視する姿勢を示しました。

2015年にはモンゴルを永世中立国にすると宣言しましたが、国際的な理解を得られず、この構想は頓挫しています。

エルベグドルジは、モンゴルの民主化、経済発展、そして国際社会における地位向上に大きく貢献した政治家として、その功績は高く評価されています。

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