ツシマトリノフンダマシ

ツシマトリノフンダマシ：テントウムシに似た希少なクモ

ツシマトリノフンダマシ (Paraplectana tsushimensis) は、その名のとおり対馬で最初に発見されたクモです。テントウムシを思わせる丸みを帯びた赤い腹部には、多数の黒い斑点と筋点が散りばめられており、非常に特徴的な見た目を持っています。南方系の種であり、日本では比較的珍しいクモとして知られています。

形態

雌の成体は体長約7mmで、腹部は長さ6.2mm、幅7.5mmと幅広です。腹部背面にはほぼ円形の黒い斑紋が12個、さらに大小様々な筋点が多数見られます。腹部の下面にも黒い円紋が並び、背面の斑紋とつながっているものもあります。頭胸部は黄色がかった褐色で、腹部を覆うように配置されています。雄は雌に比べてはるかに小さく、体長は約2.8mmしかありません。腹部の形も五角形に近い形状をしています。

分布と生息環境

ツシマトリノフンダマシは、対馬の他、本州南部、四国、九州、南西諸島、台湾、中国などにも分布しています。果樹園、草原、森林の周辺など、様々な環境で見られます。

生態

昼間は葉の裏などに隠れて静止し、夜になると活動を開始します。特徴的なのは、同心円状の円網を張ることです。網を張る際には、足場糸を使わず、中心を経由して横糸を張っていきます。沖縄での観察例では、網の大きさは長径30～40cm、短径20～30cmとかなり不規則で、縦糸の本数も4～7本、横糸も場所によって異なります。夜明け前には網を畳み、縦糸と横糸をまとめて折りたたんで、数本の縦糸を残して再利用します。卵嚢はシロオビトリノフンダマシの卵嚢に似ているとされています。

近似種

ツシマトリノフンダマシは、トリノフンダマシ属のクモに似ていますが、腹部の丸み、最大幅の位置、そして多数の筋点の存在によって区別できます。日本には近縁種としてサカグチトリノフンダマシ (P. sakaguchii) がいますが、腹部が黄色で斑紋が白いことから容易に区別できます。また、アフリカ産のP. walleriにも似ていますが、斑紋の位置や数で区別可能です。

まとめ

ツシマトリノフンダマシは、その独特の形態、希少性、そして興味深い生態から、クモ研究において重要な種と言えるでしょう。今後の研究によって、さらに多くのことが解明されることが期待されます。本種に関するさらなる知見の蓄積は、生物多様性保全の観点からも重要です。今後の研究により、より詳細な生態や分布、遺伝的な特徴などが明らかになることで、より包括的な理解へと繋がると期待されます。

参考文献

八木沼健夫 (1986). 原色日本クモ類図鑑. 保育社.
小野展嗣編著 (2009). 日本産クモ類. 東海大学出版会.
新海栄一 (2006). 日本のクモ. 文一総合出版.
山口鉄男 (1960). 対馬産Paralectana属の一新種. 長崎大学学芸学部自然科学研究報告, 11, 5-8.
Akio Tanikawa (2011). The first description of male of Paraplectana tsushimensis (Aranea: Araneidae). Acta Arachnol., 60(2), 71-73.
池田博明編 (2015). クモ生理生態事典2011 (オンライン).

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