ツルギテンナンショウ

ツルギテンナンショウ（Arisaema abei）

ツルギテンナンショウ（学名: Arisaema abei）は、サトイモ科のテンナンショウ属に属する多年草で、主に四国の山地に自生しています。この植物は特にブナ帯林の下に見られ、標高1100mから1700mの範囲で生育しています。特徴的な構造を持ち、多くの特徴が育成環境や分類学的な観点から注目されています。

特徴

ツルギテンナンショウは通常90cm程度の高さに成長します。その偽茎部は長く、花序柄と葉柄がほぼ同じか、花序柄がやや長めです。葉は通常2枚つき、第一葉の葉柄は長く、第二葉は相対的に短いため、時には無柄状に見えることもあります。葉身は分裂して鳥足のように展開し、葉軸は斜めに発達しているため、葉は一様には並びません。小葉の数は9から15個で、狭楕円形をしており、先端は鋭く、しばしば細かい鋸歯が見られます。

花期は例年6月下旬から7月上旬にかけてで、日本のテンナンショウ属の植物の中では比較的遅い開花時期を持ちます。花序柄は葉柄と同じ長さかそれより長く、仏炎苞は全体が緑色で遅れて開きます。筒状の仏炎苞の上部は広がっており、卵形から広卵形になる特徴があります。花序の付属体は黄緑色から黄褐色で、黄緑色に細かい皺が見られます。秋になると、熟した果実は赤く変わります。この植物の染色体数は2n=28です。

生育環境

ツルギテンナンショウは日本固有の種で、特に四国のブナ帯林に生息します。厳密には、この植物は標高1100mから1700mの範囲に位置する林下で確認されています。この生息環境は、植物の生長や繁殖に必要な特有の条件が整っているため、ツルギテンナンショウの姿を見ることができるのです。

名前の由来

ツルギテンナンショウという名前は、植物学者の芹沢俊介によって名付けられました。この名前は、植物のタイプ標本が採集された徳島県の剣山にちなんでいるとされています。また、種小名である「abei」も同様に芹沢の命名によるもので、彼は1975年に愛媛県の石鎚山で採集した後、徳島県の植物研究家、阿部近一の同样の標本採集を知り、共同調査を経て新種として記載されました。

保護状況

ツルギテンナンショウは、環境省のレッドリストにより絶滅危惧IB類 (EN)に指定されています。各都道府県でも評価が行われており、徳島県では絶滅危惧IA類(CR)に、愛媛県では絶滅危惧IB類(EN)に、高知県では絶滅危惧IA類(CR)に指定されています。さらに、2018年には国内希少野生動植物種としても指定され、採取や損傷が制限されています。

分類と類似種

ツルギテンナンショウは、数つの特性からムロウテンナンショウやスルガテンナンショウと似た部分がありますが、主に開花時期や花序の特徴で区別されます。前者は葉と仏炎苞が同時に展開し、見た目は白色です。一方、ツルギテンナンショウは葉が前に展開し、仏炎苞は遅れて開きます。このように、植物名はその特性が反映された重要な情報源であり、環境保護の観点からも重要視されています。

ツルギテンナンショウは、その独特な特徴と生育環境、さらには保全状況から、学術的にも観光的にも興味深い植物です。

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