石鎚山

石鎚山（いしづちさん、いしづちやま）は、愛媛県西条市と久万高原町の境界に位置する標高1,982mの山で、西日本最高峰として知られています。古くから山岳信仰の対象として崇められ、その歴史と自然の美しさは多くの人々を魅了してきました。

概要

石鎚山は、日本百名山、日本百景、日本七霊山の一つに数えられ、霊峰石鎚山とも呼ばれています。石鎚山脈の中心であり、四国百名山の一番にも選ばれています。1955年には石鎚国定公園に指定され、2018年には四国八十八景に西日本最高峰からの眺望が選定されました。

石鎚山は、最高峰の天狗岳（1,982m）、石鎚神社山頂社のある弥山（1,974m）、南尖峰（1,982m）の三峰からなる総体山を指します。これらの峰は、星が森から見ると涅槃弘法大師、西条市北部から見ると涅槃釈迦の姿に見えると言われています。

三角点は天狗岳や弥山にはなく、弥山の北西にある1,920.63mのピークに三等三角点が設置されています。このピークは三角点山または北岳と呼ばれています。石鎚山系の一等三角点は、南西側の二ノ森山頂に設置されています。

山名の由来

石鎚山の名前は、かつて石土山と呼ばれた笹ヶ峰や瓶ヶ森から授かったとされています。また、山の形が石でできた剣「石鎚」に似ていることが由来という伝承もあります。古くから修験道の山として知られています。

伝説

伊曽乃の女の神が石鎚山の男の神に求婚した際、石鎚山の神は修行が必要であるとして、山から3つの石を投げ、その落ちた場所で待つように言いました。その石の落ちた場所が伊曽乃神社であるという伝説が残されています。

地質

石鎚山は、約1500万年前まで火山として活動していました。山体は安[[山岩]]から成り、この安[[山岩]]は山頂の南側の面河渓を中心とする直径約7kmに分布し、カルデラを形成していました。このカルデラは、環状割れ目噴火によるバイアス式カルデラです。約2万年前の最終氷期には周氷河作用により岩石が砕かれ、現在の岩稜の山が形成されたと考えられています。

動植物

石鎚山とその周辺の森林は、暖帯林から温帯林、亜寒帯林へと変化に富んでいます。亜高山帯針葉樹林は日本最南端に位置し、多様な動物が生息しています。クマタカ、ハヤブサ、ヤマネなどの生息地として重要であり、国指定石鎚山系鳥獣保護区に指定されています。

石鎚山を模式産地とする生物も存在し、イシヅチトゲアシイエバエなどがその例です。

山岳信仰

石鎚山は、古代から山岳信仰の山として崇められてきました。山頂付近の露岩が「イワツチ」と呼ばれ、その名前が山名の由来となったという説もあります。奈良時代には修験道の道場として知られ、役小角や空海も修行したとされています。石鎚神社、前神寺、極楽寺、横峰寺などが信仰の拠点となっています。

古代の石鎚山は、現在の石鎚山だけでなく、笹ヶ峰や瓶ヶ森を含む広範囲を指していたという説もあります。開山の伝承としては、657年に役の行者らが修行の末に石土蔵王権現を感得し、天河寺を開創したとされています。その後、石仙や上仙らが山を開き、石鎚蔵王大権現を称えました。

平安時代には神仏習合が行われ、金剛蔵王権現や子持権現が祀られました。桓武天皇の病気平癒祈願の成就により、常住に七堂伽藍が建てられ、勅願寺「金色院前神寺」となりました。江戸時代には、前神寺と横峰寺の間で別当職をめぐる紛争がありましたが、最終的に前神寺が「石鈇山蔵王権現別當」の専称権を得ました。

明治時代の神仏分離により、石鈇蔵王権現は石土毘古命となり、前神寺は廃寺、横峰寺は横峰社となりましたが、後に両寺とも復興しました。1902年には石鉄神社が石鎚神社と改称されました。現在も、毎年7月には「お山開き」の神事が行われ、多くの信者が参拝登山に訪れます。

登山

石鎚山の登山は、天狗岳を目指すのが一般的ですが、弥山まで登る人も多くいます。弥山には石鎚神社の鎮座のほか、山頂小屋があります。弥山へは3箇所の鎖場があり、それぞれ「一の鎖」、「二の鎖」、「三の鎖」と呼ばれています。鎖場には迂回路も用意されています。「一の鎖」の手前には「試しの鎖」があり、これが最も急勾配です。山頂からは瀬戸内海や土佐湾、遠くは中国山地や九州の山々まで望むことができます。

主な登山コースは、石鎚登山ロープウェイを使用する成就社コース、石鎚スカイラインや瓶ガ森林道を使用する土小屋コース、面河渓谷コースの3つです。他にも、ロープウェイを使わない西ノ川登山口からのコースや今宮道からのコースもあります。西ノ川登山口からのコースは遭難事故も発生しているので、十分な準備が必要です。天狗岳直下にはロッククライミングのフィールドがあり、沢登りのルートも知られています。

競技での利用

石鎚山ヒルクライムという自転車競技が、毎年9月下旬に石鎚スカイラインで開催されます。この競技は、地元自治体や観光団体などが主催し、多くの参加者を集めています。

周辺の山々

石鎚山の周辺には、堂ヶ森、二ノ森、岩黒山、子持権現山、瓶ヶ森などの山々が連なっています。

文学・メディア

2000年には、石鎚山を舞台とした小説「永遠の仔」が発表され、テレビドラマ化もされました。また、NHKの番組「日本の名峰50」では、石鎚山が第4位に選ばれました。

その他

石鎚山には、御来光の滝（日本の滝百選）や石鎚スカイライン、瓶ヶ森林道などの観光スポットがあります。また、石鎚山に山容が似ているとされる伊予ヶ岳（千葉県南房総市）もあります。石鎚山の北には、知る人ぞ知る幻の行場「北の行場」も存在します。

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