ツルナ・ゴーラ府主教領

ツルナ・ゴーラ府主教領について

ツルナ・ゴーラ府主教領（Митрополство Црногорско）は、かつてモンテネグロに存在した神権国家であり、1696年から1852年までの約150年間にわたりました。この地方は、セルビア正教会のツェティニェ主教によって統治されていました。オスマン帝国の支配を逃れ、ツェティニェの教区は実質的にロシアの保護領となり、府主教（vladika）の統治が行われました。

歴史的背景

この府主教領の起源は、バルカン半島のほとんどを支配していたオスマン帝国に対抗するモンテネグロの氏族連合に遡ります。主導的役割を果たしたのは、ツェティニェの主教であったダニーロで、彼はその地位を利用して世俗的権力を持つ世襲制の主教公を確立しました。ダニーロの時代から始まるこの体制は、後のペトロヴィチ＝ニェゴシュ家による支配へと引き継がれ、モンテネグロの歴史に深く刻まれました。

ダニーロの家系であるペトロヴィチ＝ニェゴシュ家は、その支配を1782年から1830年までの間、ペータル1世やペータル2世といった領主を通じて維持しました。この期間、モンテネグロは内部の統一を図り、オスマン帝国に対抗する動きを強化しました。しかし、その間には一時的にヴェネツィア共和国の支援を受けたヨヴァン・ラドニッチが名目的な支配者として登場することもありました。

政治の変遷

1852年、主教公ダニーロ2世は彼自身の統治を世俗化し、クニャージ（公）になることを宣言しました。この変節は、ツルナ・ゴーラ府主教領をモンテネグロの公国に変えるもので、モンテネグロが世俗的な政治体系を構築する道を開きました。これにより、宗教的な支配から政治的な支配へと移行し、モンテネグロの国家としての基盤が固まります。

主な支配者

ツルナ・ゴーラ府主教領の主な支配者には、以下のような人物がいます。

• - ダニーロ1世 (1696-1735)
• - サヴァ・ペトロヴィチ (1735-1781)
• - アルセニイェ・プラメナツ (1781-1784)
• - ペータル1世 (1782-1830)
• - ペータル2世 (1830-1851)
• - ダニーロ2世 (1851-1852)

これらの支配者たちは、モンテネグロの独立とアイデンティティを形成する上で、重要な役割を果たしました。

まとめ

ツルナ・ゴーラ府主教領は、モンテネグロの歴史において特異な地位を持つ神権国家でした。その成立と発展は、オスマン帝国に対抗する力を結集した結果であり、地域の宗教的、政治的な変化をもたらしました。この府主教領は、後のモンテネグロ公国へと移行していく基盤を形成したのです。

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