ツール・ド・フランス1985

ツール・ド・フランス1985：王者イノーの5度目の戴冠と、新たな時代の幕開け

1985年のツール・ド・フランスは、第72回目の開催を迎え、6月28日から7月21日まで全22ステージで争われました。この大会は、ベルナール・イノーがジャック・アンクティル、エディ・メルクスに並ぶ史上最多タイとなる5度目の総合優勝を達成したことで、その名を歴史に刻みました。また、NHKが初めてツール・ド・フランスを紹介した大会としても、日本における自転車ロードレースの普及に大きく貢献しました。

大会前の展望：イノーの復活とレモンの存在

前年まで2連覇を果たしていたローラン・フィニョンが故障で欠場となり、イノーにとっては大きなチャンスが到来しました。イノー自身も、前年のツールでフィニョンに敗北を喫していましたが、この年のジロ・デ・イタリアで3度目の総合優勝を果たし、完全復活をアピール。さらに、チームメイトであるグレッグ・レモンという強力なアシストを得て、万全の体制でツールに臨みました。戦前の下馬評では、イノーが圧倒的な本命と目されていました。

激戦の展開：イノーの苦難とレモンの台頭

イノーは、プロローグのタイムトライアルでいきなりマイヨ・ジョーヌを獲得し、その後も順調にステージを進めました。総合2位にはレモンがつけ、ラ・ヴィ・クレールが盤石の体制を築きます。しかし、第14ステージでイノーが落車し鼻を骨折。これにより、第17ステージではレモンとの差が2分25秒まで縮まり、レモンにも総合優勝の可能性が見え始めました。イノーの体調次第では、レモンがエースとなる可能性もありましたが、イノーの5度目の優勝への執念は凄まじく、レモンはアシストに徹することを決意します。

イノーの勝利と、レモンへの約束

最終的に、イノーはレモンに1分42秒差まで詰め寄られましたが、見事に逃げ切り、5度目の総合優勝を達成。2度目のツール・ジロのダブルツール制覇という偉業も成し遂げました。大会後、イノーは「来年のツールはレモンに勝たせる」と明言し、次世代のリーダーへの期待を表明しました。

日本におけるツール・ド・フランスの幕開け

この大会は、NHKのサンデースポーツスペシャルで初めて紹介され、日本におけるツール・ド・フランスの認知度を飛躍的に高めました。それまで、ツール・ド・フランスは一部の自転車雑誌でしか紹介されていませんでしたが、NHKの放送をきっかけに、その名が日本全国に広まりました。日本人にとって、1985年のツール・ド・フランスは、自転車ロードレースの世界への扉を開いた、歴史的な大会と言えるでしょう。

大会の総括

1985年のツール・ド・フランスは、ベルナール・イノーの5度目の総合優勝、グレッグ・レモンの台頭、そしてNHKによる初の紹介という、数々のドラマと話題に彩られた大会でした。この大会を機に、日本における自転車ロードレース人気は高まり、今日に至るまで多くのファンを魅了し続けています。

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