ティモシー・ガートン・アッシュ

ティモシー・ガートン・アッシュは、1955年にロンドンで生まれたイギリスの著名な歴史学者です。彼の専門は現代ヨーロッパ史であり、特に20世紀後半の東欧における政治変動や、ヨーロッパ統合の歴史と現状に関する研究で知られています。

オックスフォード大学で学んだ後、ベルリン自由大学とフンボルト大学に留学し、ヒトラー政権に対する抵抗運動を研究しました。この留学中に共産党体制下の東欧諸国を訪れ、反体制活動のレポートを『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス』、『インディペンデント』紙、『タイムズ』紙などに寄稿。1989年の東欧革命を現地で体験し、その熱狂と変革の過程を目の当たりにしました。これらの経験は、彼の著作や思想に大きな影響を与えています。

アッシュは、学術的な研究に加えて、ジャーナリストとしても活動し、現代社会の重要な問題について積極的に発言しています。2017年には、英国の欧州連合（EU）離脱に反対する主張が評価され、カール大帝賞を受賞。「情熱と明確さをもって欧州連合の道のりを論説」し、「欧州に思慮に富む深みを与え」たと評価されました。この受賞は、彼のヨーロッパ統合に対する深い理解と、それに対する貢献を明確に示すものです。

現在、アッシュはオックスフォード大学セント・アンソニーズ校教授、スタンフォード大学フーバー研究所上級研究員を務めています。彼の著作は、現代史研究における重要な文献として広く読まれており、その分析は政策立案者や一般読者にも影響を与えています。

主な著書

Und willst du nicht mein Bruder sein: Die DDR heute (1981)
The Polish Revolution: Solidarity, 1980-82 (1983)
The Uses of Adversity: Essays on the Fate of Central Europe (1989)
The Magic Lantern: the Revolution of '89 Witnessed in Warsaw, Budapest, Berlin, and Prague (1990)
In Europe's Name: Germany and the Divided Continent (1993) - 『ヨーロッパに架ける橋：東西冷戦とドイツ外交』（杉浦茂樹訳、みすず書房 2009）
The File: A Personal History (1997) - 『ファイル：秘密警察とぼくの同時代史』（今枝麻子訳、みすず書房 2002）
History of the Present: Essays, Sketches, and Dispatches from Europe in the 1990s (1999)
Free World: Why a Crisis of the West Reveals the Opportunity of Our Time (2004) - 『フリー・ワールド：なぜ西洋の危機が世界にとってのチャンスとなるのか?』（添谷育志・葛谷彩・金田耕一・丸山直起訳、風行社 2011）
Facts are subversive: political writing from a decade without a name (2010) - 『ダンシング・ウィズ・ヒストリー：名もなき10年のクロニクル』（添谷育志監訳、風行社 2013）

また、アッシュは編著も手掛けており、幅広いテーマに関する知識と見識を示しています。

Freedom for Publishing, Publishing for Freedom: the Central and East European Publishing Project (1995)
Civil resistance and power politics: the experience of non-violent action from Gandhi to the present* (2009, Adam Robertsとの共編)

2024年にはライオネル・ゲルバー賞を受賞。彼の業績は、現代史の理解に不可欠であり、ヨーロッパの未来を考える上で重要な視点を提供し続けています。

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