ティルマ川

ティルマ川は、ロシア連邦ハバロフスク地方を流れるブレヤ川の左支流です。全長334km、流域面積は15,100㎢に及び、小ヒンガン山脈を源流としています。

この川は、かつてツングース語族の言語、特に満洲語で「シヤルミ川（Siyarmi bira）」と呼ばれていました。この名称は、この地域が古くからツングース系民族の生活圏であったことを示唆しています。

ティルマ川は、晩秋から冬にかけての長い期間、凍結します。通常、11月頃から川面が凍り始め、氷が解けるのは翌年の4月下旬から5月頃になります。この凍結期間は、川の利用や地域の交通に大きな影響を与えます。

歴史的には、17世紀に清朝（ダイチン・グルン）がこの地域を支配するようになると、周辺地域に関する調査が行われました。その中で、ニオマン川（現在のブレヤ川）の調査が行われた際に、ティルマ川も注目されました。清朝が作成した黒竜江流域の地図である「ランタン地図」には、この川がシヤルミ川という名称で正確に記されています。これは、清朝がこの地域を詳細に把握し、地図製作にも力を入れていた証拠と言えるでしょう。地図への記載は、ティルマ川が当時の地理的、政治的に重要な存在であったことを示しています。

ティルマ川の流域には、豊かな自然環境が広がっており、多様な動植物が生息しています。また、この地域は、少数民族の文化や歴史が色濃く残る場所でもあります。川の周辺では、古くから狩猟や漁労が行われており、地域住民の生活と深く結びついています。現在でも、ティルマ川は、流域の人々にとって重要な水源であり、生活を支える上で欠かせない存在です。

このように、ティルマ川は、地理的な特徴だけでなく、歴史的にも重要な意味を持つ川であり、その流域には、豊かな自然と文化が息づいています。

参考文献
承志『ダイチン・グルンとその時代』名古屋大学出版会、2009年
松浦茂『清朝のアムール政策と少数民族』京都大学学術出版会、2006年

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