ティンメン/事の起こりはキャデラック

映画『ティンメン／事の起こりはキャデラック』

1987年に公開されたアメリカ映画『ティンメン／事の起こりはキャデラック』（原題: Tin Men）は、バリー・レヴィンソンが監督を務めたコメディ作品です。リチャード・ドレイファスとダニー・デヴィートが主演を務め、バーバラ・ハーシーが共演しています。舞台は1963年のボルチモア。小さな交通事故から始まった二人のセールスマンの滑稽な争いを、人情味豊かに描いています。

あらすじ

主人公は、腕利きのセールスマン、ビル“BB”バボウスキー（リチャード・ドレイファス）と、セールスの才能に恵まれないアーネスト・ティリー（ダニー・デヴィート）。

ある日、BBは購入したばかりのキャデラックでディーラーを出ようとした際、ティリーの運転するキャデラックと接触事故を起こします。互いに非を認めない二人は激しくののしり合います。BBは、リフォーム用外壁材を巧みな話術で売りさばく優秀なセールスマンで、高級スーツに身を包み、キャデラックを乗り回すのが日課でした。一方、ティリーはセールス成績が振るわず、競馬に収入を費やしてしまうため、妻ノラ（バーバラ・ハーシー）との関係も冷え切っていました。

BBは、ある晩ティリーの車のヘッドライトを壊し、翌日ティリーはBBの車の窓ガラスをすべて叩き割って仕返し。エスカレートする二人の争いは、BBがティリーの妻ノラを誘惑し、ティリーを挑発する事態にまで発展します。見かねた同僚たちが仲裁に入りますが、事態は悪化するばかりでした。

しかし、BBの先輩セールスマンであるモー・アダムス（ジョン・マホーニー）が仕事中に心臓発作で倒れたことをきっかけに、BBの心境に変化が表れます。貯金も保険もないモーの姿を見て、BBは衝撃を受けます。一方、ティリーは税金滞納で家財を差し押さえられ、ノラはBBの家に身を寄せることになります。もはや喧嘩をしている場合ではない状況になり、二人の感情に変化が表れ始めます。

折しも、悪徳リフォーム業者に対する苦情が相次ぎ、州は住宅改善委員会を発足して調査を開始します。ティリーの上司（J・T・ウォルシュ）は、業績不振のティリーをスケープゴートにしようとしますが、BBは自ら犠牲になることを決意します。公聴会で販売員許可証を取り消されたBBは、清々しい気持ちになります。会場を出ると、ティリーの車が国税局に没収されていたため、BBはティリーを自分の車に乗せて、次の仕事の計画を語り始めるのでした。

作品概要

本作は、バリー・レヴィンソン監督の故郷ボルチモアを舞台にした4部作の2作目にあたります。他の作品には、『ダイナー』（1982年）、『わが心の[[ボルチモア]]』（1990年）、『リバティ・ハイツ』（1999年）があります。

映画には、セールスマンたちがダイナーで会話を楽しむシーンが度々登場しますが、これはレヴィンソン監督自身の若い頃の記憶に基づいていると言われています。監督が1963年頃、ダイナーで食事をしていると、隣のテーブルで年上の男たちが詐欺まがいの話をしているのが聞こえたそうです。派手なスーツを着て、世の中に反抗的な雰囲気を醸し出していた彼らの姿が、映画に反映されています。ダニー・デヴィートたちが朝食をとるシーンで後ろの席にいる若者グループは、当時のレヴィンソン監督たちを模したものです。

劇中に登場するダイナーは、『ダイナー』と同じ場所を使用しており、『ダイナー』でマイケル・タッカーが演じたベーグルというキャラクターも登場します。また、撮影スタッフが「道路から少し奥まった、芝生の庭がある3階建ての木造住宅」という条件のロケ地を探していた際、レヴィンソン監督は自分が生まれ育った家を提案し、実際に撮影に使用されました。その家は、BBとジョン・マホーニーがLife誌の取材を装って客を騙すシーンで使用されました。

プロダクションノートには、当時の一般的なセールスマンの生活が詳細に記されています。午前11時頃にダイナーで遅い朝食をとり、競馬場で遊んだ後、調査員に扮した同僚とともにキャデラックで住宅を巡回。キャデラックは、客からの信用を得るための重要なアイテムでした。セールスマンは、顧客宅で長居をして契約させ、工事を始めさせます。工事が始まれば、キャンセルは難しく、中断すれば近所で噂になるため、契約を解除することはほとんどありません。彼らにとって、セールスは合法的な詐欺のようなものでした。

工事費が1000ドルの場合、契約金額は2400ドル。バックマージンは800～900ドルで、セールスマンと調査員が6:4の割合で受け取っていました。営業所は郊外にあり、看板も掲げられていないため実態が分かりにくく、セールスマンは会社に拘束されるのを嫌い、フリーランス契約のため、営業所にはほとんど立ち寄らず、車や飲食店で仕事をしていました。彼らの勤務時間は1日に4時間程度で、週に4日しか働きませんでした。成功して大金持ちになった者もいましたが、ほとんどがギャンブルや酒に費やしてしまい、貯金や保険、年金もない状態でした。

1963年、メリーランド州は住宅改善委員会を開設し、訪問販売に一定のルールを設けたため、多くのセールスマンが転職を余儀なくされました。

タイトルの「Tin Men（ブリキ男たち）」は、アルミサイディング（金属製の外壁材）のセールスマンを揶揄する当時の俗語です。

出演者

リチャード・ドレイファス
ダニー・デヴィート
バーバラ・ハーシー
ジョン・マホーニー
J・T・ウォルシュ

評価

批評家からは概ね好評で、Rotten Tomatoesでは78％、Metacriticでは75％の支持を得ています。

挿入歌

（曲名リストは省略）

外部リンク

ティンメン/事の起こりはキャデラック － Allcinema
Tin Men － IMDB
Tin Men － IMCDB

出典

脚注（省略）

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