テイク・トゥエルヴ

リー・モーガン『テイク・トゥエルヴ』

『テイク・トゥエルヴ』（Take Twelve）は、ジャズ史に名を刻むトランペット奏者、リー・モーガンが1962年に録音し世に送り出したスタジオ・アルバムです。

アルバムの背景と位置づけ

この作品は、リー・モーガンがそれまで所属していたアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズを1961年夏に脱退してから、初めてリーダーとして臨んだレコーディング・セッションの成果として誕生しました。メッセンジャーズという強力なグループを離れた後の、自身の音楽性を追求する新たな段階での重要な一歩と言えます。

さらに特筆すべきは、彼のリーダー・アルバムの大多数が名門ブルーノート・レコードからリリースされている中で、『テイク・トゥエルヴ』は唯一ジャズランド・レコードから発表された作品であるという点です。この事実は、モーガンのディスコグラフィーにおいて、本作が珍しい位置づけにあることを示しています。

楽曲と参加ミュージシャン

アルバムの収録曲は、リー・モーガン自身のオリジナル曲が中心です。合計6曲のうち4曲をモーガン自身が手掛けています。また、本セッションでテナー・サクソフォーンを担当したクリフォード・ジョーダンが作曲した「リトル・スペイン」、そしてピアニストのエルモ・ホープによるタイトル・トラック「テイク・トゥエルヴ」も収録されており、楽曲の多様性を加えています。

この録音セッションには、リー・モーガン（トランペット）を中心に、クリフォード・ジョーダン（テナー・サクソフォーン）、バリー・ハリス（ピアノ）、ボブ・クランショウ（ベース）、ルイス・ヘイズ（ドラムス）といった、当時のジャズシーンで活躍していた実力派ミュージシャンたちが参加しています。彼らの卓越した演奏が、アルバム全体のサウンドを豊かにしています。

評価

本作はその音楽性において、評論家からも注目されました。著名な音楽データベースサイトであるオールミュージックにおいて、音楽評論家スコット・ヤナウは『テイク・トゥエルヴ』に5点満点中4点という高い評価を与えています。ヤナウ氏はレビューの中で、「優れた楽曲も収録されており、単なる演奏の記録に終わらない価値を持っている」と認めつつも、「基本的には自然発生的なジャム・セッションのような雰囲気が根底に流れている」と評しています。これは、楽曲としての構成力と、レコーディング現場でのミュージシャンたちの自発的な相互作用が見事に融合した作品であることを示唆しています。

収録曲リスト

以下に、本アルバムの収録曲を記します。特に記載がない曲は、リー・モーガンが作曲したものです。

ラジッディ・アン ("Raggedy Ann") - 6:52
ア・ワルツ・フォー・フラン ("A Waltz for Fran") - 5:00
リー・シュア・タイム ("Lee-Sure Time") - 8:31
リトル・スペイン ("Little Spain") (作曲: クリフォード・ジョーダン) - 7:50
テイク・トゥエルヴ ("Take Twelve") (作曲: エルモ・ホープ) - 4:59
セカンズ・ベスト（テイク5） ("Second's Best" (Take 5)) - 7:30

リマスター版CDには、ボーナス・トラックとして以下の別テイクが収録されています。

セカンズ・ベスト（テイク1） ("Second's Best" (Take 1)) - 7:30

参加ミュージシャンリスト

本アルバムの録音に参加したミュージシャンは以下の通りです。

リー・モーガン (Lee Morgan) - トランペット
クリフォード・ジョーダン (Clifford Jordan) - テナー・サクソフォーン
バリー・ハリス (Barry Harris) - ピアノ
ボブ・クランショウ (Bob Cranshaw) - ベース
ルイス・ヘイズ (Louis Hayes) - ドラムス

『テイク・トゥエルヴ』は、リー・モーガンのキャリアにおける重要な局面を捉えた作品であり、彼のリーダーシップのもと、集まった名手たちの演奏が光るアルバムとして、今日でも多くのジャズファンに聴き継がれています。

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