テオファヌ

テオファヌ：神聖ローマ帝国の皇后

テオファヌ（960年 - 991年6月15日）は、神聖ローマ皇帝オットー2世の皇后として知られています。彼女は東ローマ帝国（ビザンツ帝国）出身であり、その出自と文化的な影響は、当時の西ヨーロッパに大きな変化をもたらしました。ギリシャ語名のテオファノ、テオファニアとも呼ばれます。

生涯

テオファヌはコンスタンティノープル（現在のイスタンブール）で生まれました。彼女の出自については諸説あり、東ローマ皇帝ヨハネス1世ツィミスケスの姪という説と、ロマノス2世と皇后テオファノの娘という説が存在します。いずれにしても、彼女が東ローマ帝国の皇族であったことは確かであり、キエフ公国の公妃となったロマノス2世の皇女アンナ・ポルフィロゲネタとともに、初めて外国へ嫁いだ東ローマ皇族の一人として数えられています。

972年、テオファヌはオットー1世の求めに応じ、息子オットー（後のオットー2世）の妃として神聖ローマ帝国へ嫁ぎました。これは、東ローマ帝国と同盟関係を築くための政略結婚でした。豪華な使節団と共に到着したテオファヌは、同年4月14日にローマのサン・ピエトロ大聖堂で、ローマ教皇ヨハネス13世の立ち会いのもと、オットー2世と結婚しました。そして、その場で皇后として戴冠しました。

オットー2世との間には、5人の子供が生まれています。

アーデルハイト（977年 - 1040/44年） - クヴェードリンブルク修道院長
ゾフィー（978年 - 1039年） - ガンダースハイムおよびエッセン修道院長
マティルデ（979年 - 1025年） - ロタリンギア宮中伯エッツォ（エッツォ家）と結婚
オットー3世（980年 - 1002年）
女児（980年） - 生後3ヶ月で夭折

テオファヌは、夫オットー2世の遠征に同行し、政治的な采配も振るいました。彼女がもたらした東ローマ帝国の文化は、神聖ローマ帝国の宮廷を華やかに彩りました。特に有名なのは、当時手づかみで食事をするのが一般的だった西ヨーロッパに、東ローマ帝国で使用されていた食卓用フォークを紹介したことです。しかし、義母にあたるブルグントのアーデルハイトは、テオファヌを快く思っておらず、彼女の死を喜んだと伝えられています。

983年にオットー2世が死去すると、テオファヌは幼いオットー3世の摂政として、991年まで国を統治しました。彼女は帝国のために尽力し、その政治手腕を発揮しました。

991年、テオファヌはネーデルラントのナイメーヘンで死去し、ケルンに埋葬されました。彼女の死後も、その影響力は長く神聖ローマ帝国に残り続けました。

テオファヌは、東ローマ帝国の文化を西ヨーロッパに伝え、神聖ローマ帝国の発展に貢献した重要な人物として、歴史に名を刻んでいます。

参考文献

瀬原義生 『ドイツ中世前期の歴史像』 文理閣、2012年

関連項目

* リュートプランド (クレモナ司教)

もう一度検索