テキーラの古い産業施設群とリュウゼツランの景観

テキーラの古い産業施設群とリュウゼツランの景観

「テキーラの古い産業施設群とリュウゼツランの景観」は、メキシコの世界遺産のひとつです。メキシコを代表する蒸留酒テキーラは、ハリスコ州テキーラ市周辺で、限られた原料と製法によって造られます。

テキーラの歴史

テキーラの原料となるテキラリュウゼツランは、3500年前からこの地に自生していたと考えられています。古代より先住民たちはリュウゼツランを生活の様々な場面で活用し、絞り汁を発酵させた飲料を製造していました。

16世紀にスペイン人が入植すると、リュウゼツランの発酵飲料を蒸留し、新大陸で最初の土着原料による蒸留酒を製造しました。1600年頃には、アルタミラ侯ペドロ・サンチェス・デ・タグレが最初の工場を作り、テキーラの生産に着手したとされています。

18世紀には、農園の中に現存する施設群が建設され、生産量が増大しました。19世紀には鉄道網の整備により、テキーラはメキシコの国民的製品、そして国際的な製品へと発展しました。

登録対象

登録対象は、リュウゼツランの栽培地、醸造所と工場、タベルナ（密造施設）、街並み、そしてテウチトラン文化の遺跡と多岐にわたります。

リュウゼツランの栽培地

テキーラの原料となるテキラリュウゼツランの畑は、標高2,000m前後に広がっています。元々リオ・グランデに自生していましたが、現在はテキーラ用に栽培される形で残っています。

醸造所と工場

テキーラ市や近隣の醸造所が含まれ、18世紀から20世紀前半に建てられたものが多いです。稼働を停止し展示館などに転用されているものもあれば、現在も稼働しているものもあります。

特に重要なものとして、テキーラ市のラ・ロヘナ醸造所とアマティタン市のサン・ホセ・デル・レフヒオ農園が挙げられます。

タベルナ

タベルナは、かつてテキーラを密造していた施設を指します。登録対象はアマティタン市のロス・テペタテス酒場とラ・コフラディア農園酒場の2件です。

街並み

テキーラ、エル・アレナル、アマティタンの3つの街並みも登録対象です。エル・アレナルとアマティタンには、建築家ルイス・バラガンが手がけた教会堂が存在します。

テウチトラン文化の遺跡

テキーラ地方では、テウチトラン文化期（西暦200年頃 - 900年頃）の神殿、祭祀場、住居などの遺構が発見されており、グアチモントネス遺跡などが登録対象になっています。

登録基準

この世界遺産は、以下の登録基準を満たしています。

(2) 人類の価値の重要な交流を示すもの
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例
(5) ある文化を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの

テキーラの文化的景観、歴史的意義、国際的な影響などが多面的に評価され、世界遺産として登録されました。

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