テゼ共同体

テゼ共同体：祈りと和解の共同体

テゼ共同体は、フランスのテゼ村に拠点を置く、キリスト教のエキュメニカル（教派を超えた）な男子修道会です。年間10万人を超える若者が世界中から集まる、ヨーロッパ有数の巡礼地として知られています。テゼ共同体で用いられる祈りの歌は、様々な言語に翻訳され、世界中で歌われています。

歴史

テゼ共同体は、第二次世界大戦中の1940年、カルヴァン派の牧師の家庭に育ったブラザー・ロジェによって創設されました。彼は、分裂に苦しむ世界で、キリスト者が目に見える形で和解し、共に生きることを願い、祈りと労働の生活を始めました。1949年には、様々な教派から独立した修道会となりました。

1950年代以降、テゼ共同体は、信仰の有無に関わらず、多くの若者を引きつける場所となりました。犬養道子はテゼを「20世紀の奇跡」と評しています。急増する訪問者に対応するため、共同体は若者への司牧を重要な使命と捉えるようになりました。

ブラザー・ロジェは2005年に90歳で亡くなり、カトリック出身のブラザー・アロイスが後継者となりました。2015年には、共同体創立75周年とブラザー・ロジェ生誕100年を記念して、ドイツ・グラモフォンとのコラボレーションによる音楽アルバムが発表されました。

組織

テゼ共同体は、約100名のブラザー（修道士）で構成されています。ブラザーたちは、単純な生活を送り、すべてのものを分かち合い、院長の意思を尊重し、生涯独身を誓います。修道会はいずれの教派にも属しませんが、ブラザーたちはカトリック教会やプロテスタント諸派など、様々な背景を持っています。

テゼ共同体の特徴

キリスト者の和解

キリスト者の和解は、テゼ共同体の中心的な使命です。共同体は、カトリック教会、プロテスタント諸派、正教会など、様々な教派との連帯を大切にしています。テゼ共同体の祈りや生活には、様々な教会の伝統が取り入れられています。

観想による祈り

テゼ共同体は、観想修道会として、深い祈りによる観想を中心とした生活を送っています。一日3回の祈りの時間は、他のすべての活動を中断して行われます。この観想的な祈りから、困難な現実の中で苦しむ人々との連帯が生まれるとされています。

労働による生活

ブラザーたちは、設立以来、労働によって自らの生活を支えています。陶器やステンドグラスなどの芸術品がよく知られており、特にブラザー・ダニエルは陶芸家として国際的に有名です。

困窮する人々との連帯

テゼ共同体は、献金や遺産を一切受け取らず、貧しい生活を送っています。ブラザーたちは、フランスのテゼの他に、アジア、アフリカ、南米の貧しい地域に住み、困窮している人々と苦しみと喜びを分かち合いながら、祈りと労働の生活を送っています。

典礼（祈りのスタイル）

テゼの祈りの方法は、その信仰をそのまま表していると言われています。人々は、人間の存在の深みにある善良さを、「典礼」という言語によって体験することができます。テゼの祈りのスタイルは、短い歌を繰り返し歌うこと、沈黙、聖書の朗読、イコンの使用などを特徴としています。

テゼと日本

1978年、テゼは3名のブラザーを日本に派遣し、その後、日本各地でテゼの歌と祈りのスタイルで祈る「黙想と祈りの集い」が始まりました。これらの集いは、教派を超えて行われ、教会を支える活動として、それぞれの会場の司祭や牧師とともに企画されます。

テゼの歌は、日本の賛美歌集にも多数収録されています。また、テゼのスタイルに触発された日本の歌も多く作られています。

バングラデシュのテゼは、世界で最も貧しい地域の一つで、身体障碍や知的ハンディを持つ人々、少数民族の人々、低所得の人々、ストリート・チルドレンを支えるための様々な活動を行っています。日本の教会やクリスチャンもこれらの活動を支援しています。

テゼ共同体は、祈りと和解の精神を世界に広げ、多くの人々に希望を与え続けています。

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