テデスキ・トラックス・バンド

テデスキ・トラックス・バンド（Tedeschi Trucks Band、略称TTB）は、ブルースやロックを基盤に、ソウル、ファンク、ゴスペルなど多様な音楽要素を取り入れたミクスチャーサウンドを奏でるアメリカ合衆国のバンドです。フロリダ州ジャクソンヴィルに拠点を置き、世界的に高い評価を得ています。バンドの中核を成すのは、現代のスライドギターの第一人者として知られるデレク・トラックスと、表現力豊かなボーカルと堅実なギタープレイを披露するシンガーソングライター、スーザン・テデスキという実力派夫婦です。

バンドは2010年に結成されました。これは、デレクとスーザンがそれぞれ活動していた自身のソロバンドの活動を一旦停止し、夫婦として共に過ごす時間、特にツアーやレコーディングといった音楽活動の時間を増やしたいという彼らの願いから実現しました。TTBとして正式に始動する前にも、二人は2007年に「Derek Trucks & Susan Tedeschi's Soul Stew Revival」と銘打った合同ツアーを行っており、この経験が新たなバンドの形へと繋がったと言えます。Soul Stew Revivalでは主に過去のレパートリーが演奏されましたが、TTBでは結成時から新曲の制作に力を入れています。

それぞれのソロプロジェクトが2009年後半に活動休止を発表した後、デレクとスーザンは彼らのジャクソンヴィルの自宅スタジオに多くの友人やミュージシャンを招き、活発な作曲作業に取り組みました。テデスキ・トラックス・バンドとしての最初のライブパフォーマンスは、2010年4月1日にサヴァンナ音楽祭で開催されました。当初は「デレク・トラックス＆スーザン・テデスキ・バンド」と名乗る時期もありましたが、2011年3月7日には現在の名称である「テデスキ・トラックス・バンド」に統一されました。

TTBのサウンドは、デレク・トラックスによる独特なスライドギターのトーンとフレージング、そしてスーザン・テデスキの力強くも温かい歌声が中心となり、さらに複数の管楽器奏者やバックコーラスを含む10人以上の大編成アンサンブルによって、壮大かつ有機的なグルーヴが生み出されます。彼らは、伝統的なブルースやソウルのフィーリングを大切にしつつも、コンテンポラリーな感性を取り入れた奥行きのある音楽を追求しています。

特にライブにおける評価は非常に高く、屈指のライブバンドとして知られています。彼らのコンサートでは、オリジナル楽曲はもちろん、ロック、ブルース、R&B、ゴスペルといった幅広いジャンルから選ばれた新旧の名曲カバーが披露されます。さらに、毎回セットリストを大幅に変更し、その日の雰囲気やメンバーのインスピレーションに応じた演奏を展開するため、観客は予測不能なスリリングな体験を楽しむことができます。

スタジオ作品においても、バンドは成功を収めています。2011年6月7日にリリースされたファーストアルバム『レヴェレイター』は、音楽メディアから絶賛され、『ローリング・ストーン』誌では「傑作」と評されました。このアルバムは、第54回グラミー賞において最優秀ブルース・アルバム賞を見事に受賞しています。続く2012年には、ライブの臨場感を収めたアルバム『エヴリバディズ・トーキン』を発表し、彼らのライブでの卓越した演奏能力を示しました。その後も『メイド・アップ・マインド』(2013年)、『レット・ミー・ゲット・バイ』(2016年)、『サインズ』(2019年)などのスタジオアルバムをリリースしています。

2022年には、エリック・クラプトンの「いとしのレイラ」のインスピレーション源とされる物語をテーマにした大規模な音楽プロジェクト『アイ・アム・ザ・ムーン』を発表。このプロジェクトは、『I. クレッセント』、『Ⅱ. アセンション』、『Ⅲ. ザ・フォール』、『Ⅳ. フェアウェル』の4枚のアルバムとして、異例の短い間隔で連続的にリリースされました。また、2021年にはライブアルバム『レイラ・リヴィジテッド（Live At LOCKN')』をリリース。これは、2019年のライブでデレク・アンド・ザ・ドミノスの名盤『いとしのレイラとその他のラブ・ソングス』を全曲演奏した特別なパフォーマンスを収録したものです。

バンドのメンバー構成は、中心となるデレクとスーザン以外は流動的な側面もあります。初期から活躍したベーシストのオテイル・バーブリッジは家庭の事情で脱退しましたが、その後任としてティム・ルフェーブルを経て、現在はブランドン・ボーンがベースを務めています。また、キーボードやフルートを担当しバンドサウンドに大きく貢献したコフィ・バーブリッジは2019年に他界しましたが、その後はゲイブ・ディクソンがキーボードとボーカルで参加しています。ドラマーもJ.J. ジョンソンからイザーク・イーディーへと交代しています。現在の主要メンバーには、デレク、スーザンに加え、タイラー・グリーンウェル（ドラム）、ブランドン・ボーン（ベース）、ゲイブ・ディクソン（キーボード、ボーカル）、そしてホーンセクションやバックコーラスが含まれています。

テデスキ・トラックス・バンドは日本にも度々訪れており、フジロックフェスティバルへの出演や定期的な単独ツアーを通じて、日本の熱心な音楽ファンの前でその圧巻のパフォーマンスを披露しています。

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