テバトロン

テバトロンについて

テバトロン（Tevatron）は、アメリカ合衆国イリノイ州バタビアに位置するフェルミ国立加速器研究所（フェルミラボ）が運営する衝突型粒子加速器です。この装置は、2008年にCERNの大型ハドロン衝突型加速器（LHC）が稼働を開始するまで、世界で最も大きな衝突型加速器として知られていました。

概要

テバトロンの周長は6.3kmで、最大エネルギーは1テラ電子ボルト（TeV）まで加速が可能です。この能力が、テバトロンの名称の由来でもあります。1983年に完成し、工費は約1億2000万ドルかかりました。稼働開始後は、性能の向上が継続的に行われ、1994年に新たな加速器であるメイン・インジェクターが導入され、より高いエネルギーへの加速が可能となりました。

歴史

テバトロンの歴史は1968年にさかのぼります。この年の12月1日に線形加速器の建設が始まり、その後、メイン加速器の設置へと進みました。1970年には初の200 MeVビームが起動し、1971年には米国の加速器システム全体で初の陽子ビームが導入されました。この過程で、テバトロンプロジェクトが始まりました。

1973年から1979年までの研究開発期間を経て、テバトロンは年々加速エネルギーを高め、1976年には500 GeVの達成、そして1983年には初の1 TeVに到達しました。1986年に1.8 TeVの衝突が実現し、更なる技術革新が続きました。

テバトロンは、様々な粒子を探査するための重要な実験の場でもあり、1995年にはCDF実験とDØ実験によってトップクォークが発見されました。これに続き、他の新しい粒子の観測や質量の測定が行われ、素粒子物理学の理解に大きく寄与しました。

機構

テバトロンは段階的な加速を通じて粒子を加速させます。最初の段階ではコッククロフト・ウォルトン加速器を用いて水素をイオン化し、その後リニアックを経てブースターに促進されます。ブースターで得られたエネルギーは約8 GeVで、さらにメインインジェクターを用いて150 GeVまでの加速が行われ、最終的にテバトロンにおいて最大980 GeVまで到達します。

テバトロンの設計によるルミノシティは初期に1030 cm−2 s−1でしたが、アップグレードを経て最大4×1032 cm−2 s−1にまで達しました。これは粒子の衝突の頻度を大幅に向上させ、より多くのデータを収集するための基盤を提供しました。

成果と閉鎖

テバトロンは、1995年のトップクォークの発見をはじめとし、たくさんの重要な成果をあげました。2008年にはヒッグス粒子に関する初期の証拠が示されましたが、その後もLHCが新たなデータを提供し、結果としてTevatronの重要性が薄れていくこととなります。

最終的に、テバトロンは2011年9月30日に運用を終了しました。その後の分析により、LHCがより高いルミノシティとエネルギーを持つことが明らかになり、物理学における次代の研究が進められるきっかけとなりました。

結論

テバトロンはその研究成果を通じて、素粒子物理学に多大な貢献をしてきました。LHCの登場により一時の役割を終えましたが、テバトロンの業績は今なお物理学界で重要な位置を占めています。

もう一度検索