テマ制

テマ制の概説

テマ制（テマせい、ギリシャ語: θέματα、Themata）は、東ローマ帝国の中期に構築された地方行政の枠組みで、一般に「軍区制」とも呼ばれています。この制度名は本来、ギリシャ語で「軍団」を指しており、当時の国家状況と密接に結びついています。テマ制の特徴は、平時には兵士が農地で自由に農業を営み、その農業収益で武器や装備を自己負担し、必要に応じて召集されて国を守るという「兵農一致」のシステムです。このようにして、兵士たちは地元の農民として生活しながら、いざという時にはその土地を守るために立ち上がることが実現しました。

兵士は「ストラティオティス」と呼ばれ、外敵からの脅威にさらされた地域では、軍隊の食糧供給が兵士の農業によって独立して支えられます。これにより、士気の高い、効果的な戦力を維持することができました。また、テマ制は陸軍のみならず海軍にも適用されました。

また、テマの長官は、軍事の指揮官としての役割を果たす一方で、8世紀後期以降は民政権限も統合され、軍民両方の権限を持つ地方長官となります。テマごとの兵力は時代や地域によって異なりますが、10世紀の記録によると、最大15,000名、最小で4,000名とされています。

テマ制は概ね7世紀に始まり、野戦機動軍の軍団を起源とするとの考えが示されています。初期のテマの長官は「ストラテーゴス」と呼ばれましたが、皇帝直属軍団に由来する特定テマの長官は名称が異なることがありました。このことは、テマの歴史が徐々に発展していく過程を示しています。加えて、テマの増強の過程では人口増加策が進められ、小アジアやアルメニア出身者が新たに入植することもあったのです。

テマ制の導入

テマ制の導入には、いくつかの異なる見解があります。かつては、ヘラクレイオス王朝の時代に計画的に導入されたという考えがありましたが、近年では軍団が独自に地理的状況に基づいて軍事的措置を取った結果、帝国政府がそれを追認したものではないかとの見解が強まっています。この点に関しては、未だに議論が続いており、記録の乏しい時代のために諸説が並行しています。

例えば、テマ制は当初、ローマ帝国末期の属州制度を踏襲していたと考えられます。ここで、州長官が行政を、軍司令官が防衛を担当する制度が確立されていましたが、ヘラクレイオスの時代には、戦乱による財政悪化と外敵の侵攻により、従来の制度が限界を迎えていました。そこで、現場の軍司令官が行政権も兼任することで柔軟な対応が求められた結果、テマという新たな枠組みが形成されたとされます。

さらに、テマ制の発展には、農業生産体制の変わりゆく状況が密接に関係しています。のちに、農民たちが土地を手放すことが禁じられ、テマ単位での屯田制が整備されることにより、テマは国家の防衛力を強化する役割を果たしました。

民政機構との関係

テマ制の導入とその後の展開は、中央政府の行政機関との関連性が重要です。関連する資料は限られているものの、テマは民政機構とは別に存在し続けたため、機構の統合が進むのは8世紀後期以降と考えられています。また、軍隊の補給維持が国家の財政に与える影響を理解した中央政府は、現地の自活を進め、テマという制度を制度化する結果となったのです。

結論

テマ制はその起源が不明瞭である一方で、発足後の整備・増強には政策的に取り組まれ、まさに東ローマ帝国の防衛力を強化する要因となったと言えるでしょう。先代のユスティニアヌス朝期から現れる政治状況と災害を乗り越えて、テマ制は成功裏に機能し続けました。

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