属州

属州の概念

ローマ時代の属州（ラテン語: provincia）は、古代ローマの本国であるイタリア半島を除く領土を指します。古代ローマは最初、都市国家の連合体として存在していましたが、次第にその勢力は拡大し、周辺地域を征服することで新たな属州を設置していきました。

属州の起源

ローマの最初の属州は、第一次ポエニ戦争後に設立されたシチリア島の「属州シキリア」でした。この時期、ローマは政治権力を持つインペリウム保持者により統治される直轄地を形成しました。属州はこの後、軍事拡張や政治的な経由を通じて次々と設立され、ローマの支配下に入った地域はその制度に従うこととなります。

属州の統治機構

属州の運営は、コンスルやプラエトルと呼ばれる官職の経験者によって行われ、彼らはプロコンスルやプロプラエトルという肩書きで総督として任命されました。また、彼らの下には、官僚としてクァエストルなどの官職が設けられ、ローマから派遣された人材が地域の行政を担当しました。しかし、少人数での統治は現実的ではなく、総督は多くの場合、私的な下僚（奴隷や解放奴隷）を雇っていました。

税制とその影響

属州民には、資産や収入に基づいて10%の属州税が課せられました。この税は、兵役義務を負わない属州民に対する代償とも位置づけられました。さらに、売上税や収穫物の3分の1税といった追加の課税も存在しました。特に、国有地からの賃貸料として支払うこの3分の1税は、属州民にとって大きな経済的負担となりました。

徴税は、各都市の自治体や徴税請負人によって実施されましたが、これらの役人はしばしば総督と結託し、属州民から過剰な税を搾取することがありました。このような搾取的な課税制度は、特に新たにローマの支配下となった地域で顕著で、その結果として属州民の人口は激減しました。多くの場合、彼らは経済的な理由から債務奴隷となり、状況はさらに悪化していきました。

総督の利権と腐敗

属州総督は、地域からの収奪を通じて多額の利益を得ることができました。このため、彼らは借金をしてまで政治的地位を得ることが多く、属州からの富を背景に中央政界での影響力を増していきました。とはいえ、属州民は総督の腐敗に対して元老院に訴えかけることができましたが、実際には任期中の弾劾が免除されるため、搾取は続くことが多かったのです。

経済的影響

属州からの富はローマの繁栄を支え、特に穀物や農産物の供給は市民生活にとって不可欠でした。しかし、安価な穀物の流入はイタリア本土の自作農民に打撃を与え、彼らの没落が政情不安の一因となりました。ローマは経済的に繁栄したものの、その背後には属州民への過酷な搾取が存在していたといえるでしょう。

帝政期の変化と市民権

帝政期に入ると、徐々に属州への収奪は緩和され、安定した経済が築かれるようになります。212年にはアントニヌス勅令によって、全ての属州民がローマ市民権を得たことで、税負担は変わることはありませんでしたが、新たな対応が行われました。

まとめ

古代ローマにおける属州の制度は、政治的・経済的に多くの側面を持ち、往々にして社会に対する圧力として機能していました。属州民は彼らの運命を左右する制度に翻弄されつつ、ローマの繁栄に寄与する一方で、多くの苦難に直面したのです。

もう一度検索