テムズトンネル

テムズトンネルについて

テムズトンネル（Thames Tunnel）は、ロンドンのテムズ川河底に位置する重要な水底トンネルです。このトンネルはロザーハイズからワッピングを結んでおり、建設には新たに発明されたシールド工法が用いられました。その断面は幅約11メートル、高さ約6メートルで、全長は約396メートルです。また、トンネルは満潮時の水面から約23メートルの深さを通っています。その技術的な成功は、後に水底トンネルの建設が可能であることを証明しました。

設計と建設の背景

19世紀初頭、ロンドン内でドックが増加する中、北岸と南岸を結ぶ新たな交通手段が求められていました。最初に挑戦した技術者、ラルフ・ドッドの試みは失敗に終わり、その後のトンネル建設計画も地質の問題に直面します。

しかし、フランス帰化人のマーク・ブルネルは、水底トンネルの建設を諦めず、1814年にロシアのサンクトペテルブルクへの提案を行うも受け入れられませんでした。1818年にブルネルはシールド工法の特許を取得し、1823年にはロザーハイズとワッピングを結ぶトンネル計画へとつながります。このプロジェクトは1824年にテムズトンネル会社として設立され、1825年に工事が開始されました。

建設過程と技術革新

最初の工事は南岸のロザーハイズで行われ、大きな立坑が建設されました。直径約15メートルの鉄製円筒が組み立てられ、その上に煉瓦製の壁が建てられる方式で進められました。この円筒は地面に沈下し、途中で問題が発生することもありましたが、様々な工夫を凝らして建設は進みました。

ブルネルのシールドは、土の崩壊を防ぎながら掘削を行うために重要な役割を果たしましたが、作業環境は劣悪で、多くの作業者が病にかかるほどでした。1827年には水の浸入があり、更なる悪化を招いたものの、懸命な努力により工事は続けられました。

1828年には更なる浸水事故が発生し、作業者が6人亡くなるという悲劇もありました。ブルネル自身も困難に直面しましたが、彼のリーダーシップにより工事は続行されました。1834年には財政問題も発生していますが、資金調達に成功し、1835年に工事は再開されました。

完成とその後

トンネルは1841年に完成し、その後1843年に開通しました。歩行者専用の利用が始まったものの、車両どころか馬車すら通ることがなかったこのトンネルは、観光地としての人気を博しました。1人1ペニーの入場料が設定され、年間約200万人の訪問者を迎えるようになりました。

その後、1865年に鉄道に買収され、イースト・ロンドン鉄道の一部として使用されることになります。改修工事や補修工事を経て、最新の技術により現在も利用されています。

技術的な意義

テムズトンネルの建設は、当時の技術者たちの懐疑を超え、水底トンネルの建設が実際に可能であることを証明しました。この成功に触発され、多くの水底トンネルがその後数十年間に渡って建設されるようになります。ブルネルが開発したシールド工法も他の土木工事に大きな影響を与えました。

訪問案内

現在、ロザーハイズに位置するブルネル博物館では、当初の建設機械室を見学できます。また、定期的に徒歩でのトンネル通行も行われていますが、工事の進捗によって利用可能なタイミングが限られています。テムズトンネルは今もなお歴史的な名所として多くの人に親しまれています。

もう一度検索