テュネス

テュネス：凱旋門賞馬の半兄が歩んだ栄光の軌跡

2019年4月4日生まれのドイツ産競走馬、テュネス。その名は、ケルン・ヘンネスヒェン劇場の登場人物に由来する。2021年の凱旋門賞を制したトルカータータッソを半兄に持ち、その血統背景からも早くから注目を集めていた。父はミスタープロスペクター系のジュリアーニ、母はドイツで4戦未勝利のティファナ。2歳上の半兄トルカータータッソの存在は、テュネスの競走馬としての将来に大きな期待を抱かせた。

予想外の落札劇と競走馬としてのスタート

2020年9月、テュネスはBBAGセプテンバー・イヤリング・セールのオークションに出品された。競りでは、ケルン出身の起業家ホルガー・レンツ氏と、その妻アレクサンドラ氏の思わぬハプニングが。ホルガー氏は当初2万ユーロで入札を諦めかけたものの、彼の身振りが競売人を誤解させ、結果的に3万8000ユーロで落札することになった。この逸話は、テュネスという馬の運命を象徴する出来事と言えるだろう。

その後、ペーター・シールゲン厩舎に預託されたテュネスは、2歳シーズンを迎え、2021年9月26日にデビュー。初戦は2着に敗れたものの、続くレースで初勝利を飾る。そして、11月14日に行われたヘルツォークフォンラティボルレネン（G3）で、グループ競走初制覇。兄トルカータータッソの凱旋門賞制覇と相まって、テュネスは翌年のドイチェスダービーの有力候補に躍り出た。

大きな怪我からの復活劇と圧巻の勝利

しかし、3歳シーズンは予期せぬ事態に見舞われた。冬の間、大きな怪我を負い、9か月の休養を余儀なくされたのだ。ドイチェスダービーへの挑戦は叶わなかったものの、8月31日の復帰戦で圧勝。続く9月18日、ドイチェスセントレジャー（G3）でも8馬身差の圧勝劇を演じ、その潜在能力の高さを改めて示した。この勝利を受け、陣営は日本のジャパンカップ参戦を視野に入れ始めた。

そして迎えた11月6日、バイエルン大賞（G1）。5頭立ての競走で、テュネスは単勝1.8倍の圧倒的な支持を集めた。不良馬場の中、馬なりで先頭に立ち、2着馬に10馬身差をつける圧勝。G1初制覇を果たしただけでなく、1972年以降のドイツG1競走史に残る大差勝利となった。この勝利によって、テュネスの評価は大きく上昇し、国際的なレーティング120に相当する100キログラムまでGAG（ドイツにおける競走馬のレーティング）が上昇した。

ジャパンカップ挑戦と今後の展望

地元での活躍を経て、テュネスはジャパンカップ（GI）への挑戦を決断。ドイツから約18時間の長旅を経て来日したものの、枠入り不良による発走時刻の遅延や、出足への影響などアクシデントに見舞われ、9着に敗れた。しかし、シールゲン調教師は「無事に完走したことが何より重要だ」と語り、来シーズンへの期待を示した。

テュネスの物語は、大きな期待と困難、そして圧巻の勝利と惜敗が織りなす、ドラマチックな競走馬人生と言えるだろう。兄トルカータータッソの偉業を受け継ぎ、ドイツ競馬界を牽引する存在として、今後の活躍に期待したい。

もう一度検索