テューリンゲンの森

テューリンゲンの森：ドイツ中部の緑豊かな山地

テューリンゲン州に広がるテューリンゲンの森は、東西約150km、南北約35kmにも及ぶ広大な中低山地です。北西部のヴェラ川から南東部のフランケンヴァルトまで連なり、豊かな森林に覆われた景観は、多くの動植物の宝庫となっています。

地理と地質

この山地は、大きく分けて3つの地域に区分されます。北西部が本来のテューリンゲンの森、その東側にテューリンゲン・シーファー山地が続き、南部のハーゼル川付近には小テューリンゲンの森が広がっています。イルメナウとアイスフェルトを結ぶ線付近が、テューリンゲンの森とシーファー山地のおおよその境界線となっています。

最高峰はズール近郊にあるグローセ・ベールベルク（982m）で、その他にもグローセ・インゼルスベルク（916m）、シュネーコプフ（978m）など900mを超える山々が連なります。地質学的には、大部分が火山性の斑岩（フランケンシュタインと呼ばれる）から構成されています。

テューリンゲンの森は、エルベ川、ヴェーザー川、マイン川といった主要河川の分水界となっており、その独特の形状がヨーロッパ特有の風向きの風を遮るため、降水量が多く、浸食作用が盛んです。そのため、他の同規模の中低山地と比較して、起伏に富んだダイナミックな地形となっています。なお、18世紀の文献には、正確な標高測定が難しかったため、外観からの判断でシュネーコプフがハルツ山地のブロッケン山に次ぐドイツ第二の高峰と記述されているものもあります。

生態系

この地域は、中央ヨーロッパを代表する旧北区系のトウヒなどの針葉樹林と夏緑樹林から成り、多様な動植物が生息しています。シダ植物、顕花植物、菌類、地衣類、紅藻類といった植物相に加え、様々な甲虫類、鳥類（ナベコウなど）、両生類（ファイアサラマンダーなど）といった動物相も豊富です。

その豊かな自然環境を保護するため、1979年にはユネスコ生物圏保護区「テューリンゲンの森生物圏保護区」（旧名：フェッセルタル生物圏保護区）として登録されました。これは、この地域の生態系の保全と持続可能な利用を目的とした取り組みです。

レジャーと観光

テューリンゲンの森は、自然を満喫できるレジャースポットとしても人気があります。ザーレ川まで続くレンシュタイクハイキングコースは、1973年に整備された、かつてはドイツ最長のハイキングコースとして知られていました。

歴史的な建造物も魅力の一つです。アイゼナハ近郊にはヴァルトブルク城があり、その歴史的価値から観光客に人気です。また、ゴータとタバルツを結ぶテューリンガーヴァルトバーンという鉄道も整備されており、交通アクセスも良好です。オーバーホーフ近郊には、国際的に有名なウィンタースポーツ施設やレンネシュタイクガルテン（庭園）があり、一年を通して多くの観光客が訪れます。

テューリンゲンの森は、豊かな自然、歴史、そして多彩なレジャーが楽しめる、ドイツを代表する観光地の一つです。

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