テルマ (映画)

信仰と秘密、そして初めての恋―ノルウェー発ホラー映画『テルマ』

『テルマ』（原題：Thelma）は、2017年にノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フランス合作で制作されたホラー映画です。監督はヨアキム・トリアー、主演はエイリ・ハーボーが務め、北欧圏で高い評価を得ました。厳格な両親のもと、田舎町で育ったテルマは、自身の幼少期の記憶を持たないまま、成長していきます。

物語は、テルマがオスロの大学に進学し、一人暮らしを始めることから始まります。都会での新しい生活の中で、彼女はアンニャという女性と出会い、次第に惹かれ合い、初めての恋を経験します。しかし、この恋をきっかけに、テルマは謎めいた発作に苦しむようになり、周囲では不可解な出来事が次々と発生します。

テルマの両親、トロンとウンニは、信心深く、厳格な性格で知られています。特に母親のウンニは足が悪く、テルマの行動を常に監視している様子が見て取れます。テルマの抱える謎と、両親の奇妙な言動は、観る者に不穏な空気を感じさせます。

この映画の見どころは、テルマの身に起こる超自然現象と、彼女の過去に隠された秘密の解明です。発作は単なる病気とは考えにくく、次第にエスカレートしていく恐怖は、観客を画面に釘付けにします。テルマ自身の心の葛藤と、彼女を取り巻く環境の不穏さが見事に融合し、北欧特有のダークでミステリアスな雰囲気を作り出しています。

一方、アンニャはテルマにとって重要な存在です。彼女はテルマの心の支えであり、同時に、彼女の異様な能力の発現と関係している可能性も示唆されています。アンニャとの関係を通して、テルマは自身の過去と向き合い、自身の存在そのものを問い直していくことになります。

映画『テルマ』は、単なるホラー映画にとどまらず、人間の心の闇や、抑圧された感情が引き起こす悲劇を描いています。信仰と自由、そして秘密と真実が複雑に絡み合い、観客に深い余韻を残す作品です。

2018年には、ハリウッドでリメイクされることが決定しました。フィルムネイション・エンターテインメントが版権を獲得し、クレイグ・ギレスピー監督、クリスティ・ホールが脚本を担当するなど、ハリウッドでも高い関心を集めています。北欧ホラーの新たな金字塔として、世界中で注目を集める『テルマ』。その独特の世界観と、観る者を魅了するストーリー展開は、多くの映画ファンを虜にしています。

様々な解釈が可能なラストシーンも、この映画の魅力の一つと言えるでしょう。テルマの運命、そして彼女が抱えていた秘密の全貌は、観客一人ひとりの想像力によって、さらに深く広がっていくことでしょう。

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