テレマート

テレマート



テレマート(英商号:Telemart Corp, Inc)は、かつて日本に存在した通信販売事業を営む企業です。1991年3月に佐々木賢治氏によって株式会社日南として創業され、1993年8月にはテレマートへ商号が変更されました。同社は主にラジオ広告を通じて全国的な事業を展開していましたが、関西、東北、九州といった特定の地域においては、テレビや新聞を活用したショッピングも積極的に行っていました。取り扱う商品の中心は、人々の健康美容に関連する製品でした。

全盛期には、全国の多数のAMおよびFMラジオ局で、1日に約250本もの広告枠を用いて商品を紹介するなど、その事業規模は通信販売業界において特筆すべきものでした。

しかし、同社は経営上の問題や不祥事が相次ぎ、最終的に設立から約17年後の2008年にその歴史に幕を閉じました。

創業者・佐々木賢治氏に関する経緯



テレマートの創業者である佐々木賢治氏には、経営者としての活動以前にいくつかの問題が指摘されています。各種報道によると、1983年には弁護士資格を持たないにもかかわらず、倒産した会社の整理などの法律事務を請け負ったとして、弁護士法違反の容疑で逮捕された過去があります。また、テレマートの経営とは別の話ではありますが、2005年に経営破綻した宝石卸会社が、粉飾決算によって金融機関から多額の融資を引き出していた件においても、氏の関与が浮上したとされています。

「見せ金増資」事件



2007年2月1日、大阪府警察は、テレマートの当時の社長であった佐々木賢治氏を含む複数の関係者を、見せ金による増資を行った疑いなどで逮捕したと発表しました。具体的には、実際には払い込みが行われていない架空の資金を資本金とした上で、債権回収会社の設立登記を不正に行ったというものです。

この逮捕が公表された直後から、同社が展開していたテレビやラジオでの通信販売コーナーは中止に追い込まれました。ラジオ番組では、多くの局が急遽、別の番組を編成したり、BGMを流すなどの対応に追われました。一時的に販売コーナーが再開された局もありましたが、事件の影響は大きく、一部の放送局はテレマートのラジオショッピング枠からの撤退を決定しました。

例えば、以下のような番組編成の変更が見られました。

μFM: 「テレマートラジオショッピング」枠が別企業のラジオショッピングに変更されました。
文化放送: 早朝の同社ラジオショッピング枠が別の通販番組に切り替えられました。
FM FUJI: 番組終了後の枠が、他のラジオショッピングプログラムに置き換わりました。
BAYFM: 平日朝と夕方の枠が、他社のラジオショッピングに変更され、直前の番組時間も拡大されました。
Inter FM: 音楽などのフィラー枠に充てられていた時間に、他社のラジオショッピングやミニ番組が編成されました。

公正取引委員会からの排除命令



2007年5月18日、公正取引委員会はテレマートに対し、景品表示法に基づく排除命令を出しました。これは、同社が販売していたオーストラリア産のサーロインステーキセットに関する表示に問題があったためです。問題とされたのは、商品が牛脂肪や調味料を注入した加工肉であるにもかかわらず、パッケージ等に「きめ細かなサシ」といった、あたかも天然の霜降り肉であるかのような誤解を与える可能性のある表現を使用していた点です。公正取引委員会は、こうした表示方法が一般消費者を誤認させる不当な表示にあたると判断しました。これを受けて、同社は同年6月9日に自社のウェブサイト上で排除命令に対する公示を行い、消費者に謝罪の意を表明しました。

経営破綻へ



度重なる不祥事とそれに伴う信用失墜により、テレマートの経営は行き詰まります。2008年2月14日、従業員によって大阪地方裁判所民事再生法の適用が申し立てられるという、極めて異例の事態が発生しました。この申請に基づき、同日中に裁判所から保全命令および弁済禁止保全処分が下されました。東京商工リサーチの調査によると、この時点での負債総額は約40億円に上ったとされており、従業員が申立人となった背景には、会社からの給与未払いがあったとされています。

その後、2008年4月22日には、大阪地裁の許可を受けて、同社の通信販売事業は株式会社ダイ・コーポレーションが100%出資する新会社、株式会社アクレスへ譲渡されることが明らかになりました。さらに同年5月には、JASDAQ上場企業であったセプテーニ・ホールディングスが、アクレスが発行した転換社債型新株予約権付社債2億円分を全額引き受けるなど、事業の存続に向けた動きも見られました。しかし、経営の再建は叶わず、2008年6月には民事再生手続きが廃止され、最終的に破産手続き開始決定を受け、法人としてのテレマートはその活動を完全に停止しました。

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