テレーズの罪

テレーズの罪：息苦しい社会と人間の心の闇を描くフランス映画

2012年公開のフランス映画『テレーズの罪』（原題：Thérèse Desqueyroux）は、ノーベル賞作家フランソワ・モーリアックの代表作を映画化した作品です。監督はクロード・ミレール、主演は名優オドレイ・トトゥとジル・ルルーシュが務め、高い評価を得ています。1920年代のフランスを舞台に、地主の娘テレーズが、政略結婚によってデスケルウ家に嫁ぐことから物語は始まります。

当初は、愛のない結婚に疑問を抱くこともなかったテレーズでしたが、義理の妹で親友であるアンヌの身分違いの恋や、古臭い価値観に支配されたデスケルウ家での生活を通して、次第に息苦しさを感じ始めます。息詰まる日々の中で、テレーズは夫ベルナールにヒ素を投与するという、衝撃的な行動に出ます。ベルナールは心臓の薬として少量のヒ素を服用していましたが、テレーズは医師の処方箋を偽造し、ベルナールに気付かれないよう大量のヒ素を服用させます。

しかし、ベルナールの異変に気づいた医師らによって、テレーズの犯行は発覚。処方箋偽造の罪で告訴されます。家名を重んじるデスケルウ家とテレーズの実家の尽力により、告訴は取り下げられ、ベルナールはテレーズとの夫婦関係が良好であるかのように見せかけますが、テレーズは娘との面会を禁じられ、粗末な部屋に幽閉されてしまいます。

孤独な日々の中で、心身ともに衰弱していくテレーズ。彼女の惨めな姿を目の当たりにしたベルナールは、妹アンヌの結婚式が終わった後、テレーズを自由にすることを約束します。こうして、パリに移り住んだテレーズは、徐々に健康を取り戻していきます。

やがて、ベルナールはテレーズにヒ素を投与した理由を尋ねますが、テレーズはどんな言葉で説明しても嘘が混ざってしまうとして、その理由を明言しません。それでも、テレーズはベルナールに許しを請い、最終的にベルナールはテレーズを許し、娘との再会も許します。

この映画は、単なる犯罪ドラマではなく、閉塞的な社会の中で、女性が抱える苦悩や葛藤、そして人間の心の闇を深く掘り下げた作品です。オドレイ・トトゥの繊細な演技、そして時代背景や登場人物たちの複雑な人間関係も見どころです。

Rotten Tomatoesでは59件のレビューのうち51%が高評価で平均点は10点満点中5.5点、Metacriticでは15件のレビューで平均点は100点満点中49点、フランスのアロシネでは17のメディアによる平均点は5点満点中3.4点と、批評家の評価は様々ですが、多くの観客を魅了する作品であることは間違いありません。日本でもフランス映画祭などで上映され、WOWOWでも放送されたことで、日本でも高い関心を集めています。

映画『テレーズの罪』は、時代を超えて私たちに問いかける、人間の心の深淵を描いた傑作と言えるでしょう。 1920年代のフランス社会の閉塞感、女性への抑圧、そして人間の複雑な感情が、丁寧に描かれています。オドレイ・トトゥを始めとする俳優たちの素晴らしい演技も、作品の魅力を高めています。一度鑑賞すると、その余韻に長く浸ることができるでしょう。

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