テンペスト (2010年の映画)

映画『テンペスト』：愛と復讐の物語

2010年公開の映画『テンペスト』（原題：The Tempest）は、ウィリアム・シェイクスピアの不朽の名作戯曲を原作としたアメリカ合衆国のファンタジー映画です。シェイクスピアの緻密な言葉選びとドラマ性を活かしつつ、現代的な解釈を加えた、見応えのある作品に仕上がっています。

物語の中心人物は、プロスペラ。かつてミラノ公国の女公爵でしたが、野心的な実弟アントーニオによって島に幽閉されてしまいます。アントーニオはミラノ公国を乗っ取り、ナポリ王アロンゾと手を組んで国を衰退させていました。

孤島で魔術の力を身につけたプロスペラは、ナポリ王アロンゾ、王子ファーディナンド、そして弟アントーニオを乗せた船を島へと導きます。

プロスペラの目的は、ただ復讐だけではありません。彼女は、幽閉中に生まれた娘ミランダと、ナポリの王子ファーディナンドの愛を育み、幸せな未来を望んでいます。しかし、かつて自分を陥れた者たちへの怒りもまた、拭い去ることができません。

プロスペラは、アロンゾ王、アントーニオ、そしてアロンゾの弟セバスティアンに対し、それぞれに試練を与えます。それは、単なる復讐劇ではなく、彼ら自身の過ちに向き合い、反省を促すための試練です。

当初、プロスペラは彼らに容赦ない態度を取っていましたが、忠実な妖精アリエルや、その他のしもべたちの言葉によって、自身の心のあり方を見つめ直します。復讐心に囚われたままではいけないと悟ったプロスペラは、彼らが真摯に反省を示せば許そうと決意します。

一方、アロンゾ王は夢の中で、セバスティアンとアントーニオが反逆を企てていることをアリエルから知らされます。

全ての出来事を目の当たりにしたプロスペラは、ついにアロンゾ、アントーニオ、セバスティアンの前に姿を現し、彼らに娘ミランダとの婚約、そしてミラノ公国の返還を約束させます。こうして、プロスペラの復讐劇は、愛と許しによって幕を閉じます。

この映画では、ヘレン・ミレンが魔法使いプロスペラを、フェリシティ・ジョーンズがミランダを演じるなど、豪華なキャスト陣が作品に深みを与えています。その他、ジャイモン・フンスー、ラッセル・ブランド、リーヴ・カーニー、トム・コンティ、クリス・クーパー、アラン・カミング、アルフレッド・モリーナ、ベン・ウィショー、デヴィッド・ストラザーンといった実力派俳優たちが脇を固めています。

シェイクスピアの戯曲を忠実に再現しつつも、映画独自の解釈を加えた『テンペスト』は、復讐と許し、愛と裏切り、そして人間の複雑な感情を繊細に描いた傑作です。シェイクスピア作品に親しみがない方にも、十分に楽しめる、奥深い物語となっています。

もう一度検索