テン属

テン属（Martes）

テン属（Martes）は、食肉目イタチ科に分類される属で、多様な種が含まれています。

分布

テン属は、北アメリカ大陸、ユーラシア大陸、インドネシア、日本といった広範な地域に分布しています。それぞれの種が、異なる環境に適応して生息しています。

形態

テン属の動物は、指趾の裏が体毛で覆われているという特徴があります。また、喉には白や橙色などの明るい色の体毛が見られます。歯列は、上下に門歯が6本、犬歯が2本、小臼歯が8本、大臼歯が上顎に2本、下顎に4本、合計38本で構成されています。爪は、ある程度引っ込めることが可能です。

分類

近年、イタチ科の系統関係に関する研究が進んでいます。核DNAやミトコンドリアDNAを用いた解析では、テン属はクズリ属やタイラ属と単系統群を形成することが示唆されています。ただし、テン属内の一部の種（特にフィッシャー）を含めた場合、系統関係が不明確になることもあります。イタチ科内の亜科の分類に関しても、新たな提唱がなされており、テン属、タイラ属、クズリ属をまとめてクズリ亜科（Guloninae）とする説も存在します。

属内の系統については、解析方法によって異なる結果が出ています。例えば、マツテンとクロテンが単系統群を形成するという点では共通していますが、その姉妹群がニホンテンであるか、アメリカテンであるか、または3種が同時に分岐したのか、という点で意見が分かれています。

テン属の分類は以下の通りです。

Martes americana：アメリカテン (American marten)
Martes flavigula：キエリテン (Yellow-throated marten)
Martes foina：ムナジロテン (Stone marten)
Martes gwatkinsii：ニルギリキエリテン (Nilgiri marten)
Martes martes：マツテン (European pine marten)
Martes melampus：ニホンテン (Japanese marten)
Martes pennanti：フィッシャー (Fisher)
Martes zibellina：クロテン (Sable)

生態

テン属の多くは森林に生息しますが、ムナジロテンは岩場や市街地にも適応しています。多くの種は単独で生活しますが、キエリテンはペアや家族群で協力して狩りを行うことがあります。食性は雑食性で、小型哺乳類や果実など、様々なものを食べます。

人間との関係

属名のMartesや英名のmartenは、テンを意味する言葉で、元々はヨーロッパに生息するマツテンやムナジロテンを指していました。日本語のテンは、漢語の「貂」（チョウ、テウ）が変化したものと考えられています。

テン属の動物は、毛皮が利用されることがあります。しかし、開発による生息地の破壊や、毛皮目的の乱獲などにより、生息数が減少している種も存在します。保護対策の必要性が高まっています。

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