テ・ウレウェラ国立公園

テ・ウレウェラ国立公園（Te Urewera National Park）は、かつてニュージーランド北島東部、ホークス・ベイ地方に存在した広大な自然保護地域です。1954年に国立公園として指定されましたが、2014年にはその地位を終え、独自の法的人格を持つ保護地域「テ・ウレウェラ」として生まれ変わりました。面積は約2,127平方キロメートルにおよび、これは北島に存在した国立公園の中で最も広く、また最も深く手つかずの自然が残された隔絶された熱帯雨林として知られていました。

この地域はホークス・ベイ地方の北東部に位置しており、最も近くの町はワイロアです。公園へのアクセスは主に国道38号線が担っており、この道路を通って公園の南部に位置する広大なワイカレモアナ湖（面積約54平方キロメートル）に到達できます。アクセス路が限られているため、公園の大部分は人間の手がほとんど入らない原始に近い状態で保全されています。ワイカレモアナ湖の北東約4キロメートルには、より小さなワイカレイチ湖があり、この湖の水はアニワニワ滝やモカウ滝といった複数の滝を経て、ワイカレモアナ湖へと流れ込んでいます。

テ・ウレウェラ一帯の地形が現在の形になったのは、およそ1000万年から1500万年前の地質活動によると考えられています。この地域は主に泥岩、シルト、砂岩といった堆積岩で構成されていますが、かつて海底であった場所が約2000万年前に隆起し、その後の長い年月にわたる侵食作用によって、多数の深い渓谷が形成されました。こうした地理的な隔絶は、19世紀にイギリスがニュージーランドの植民地化を進める過程で、この地域が最後に領有権を主張された場所の一つとなる要因ともなりました。

国立公園としての歴史は、1954年7月にワイカレモアナ湖やワイカレイチ湖、そして周辺の保護区の流域が指定されたことから始まりました。その後、1957年11月には約1,350平方キロメートルの国有地が追加され、面積が大幅に拡大しました。ただし、湖底やマオリの人々が居住する区域は国立公園の範囲には含まれませんでした。湖底については、国がマオリの権利者から賃借し、ニュージーランド環境保全省が管理を行っていました。

この地域の土地に対するマオリの先住民族であるトゥホエ族の権利回復を巡る長い交渉を経て、2013年3月にはトゥホエ族とニュージーランド政府の間で和解証書が署名され、ワイタンギ審判所に提起されていた部族による請求が終結しました。この和解により、トゥホエ族は経済的な補償（1億7000万ニュージーランドドル）を受け取るとともに、テ・ウレウェラに対するより大きな監督権を得ることとなりました。そして、この和解に基づき、2014年テ・ウレウェラ法が制定され、テ・ウレウェラ国立公園は廃止されました。同時に、「テ・ウレウェラ」という名称を持つ一つの存在として、人間と同等の法的な権利と責任が認められるという、世界でも類を見ない新しい保護地域の形態へと移行しました。

「テ・ウレウェラ」という名称は、この地に古くから暮らすトゥホエ族の言語であるマオリ語に由来しており、「焦げたペニス」を意味すると伝えられています。これは地元の伝説に基づいた名前です。

この地域の生態系は非常に豊かです。植物相については、650種類を超える植物が生息していることが確認されています。公園の南部はブナ科の樹木が優占する植生が見られますが、北部ではリムノキやベイルシュミーディア・タワといった樹木が中心となっています。

動物相、特に鳥類にとって、テ・ウレウェラは重要な生息地です。公園の南部の一部を除き、森林の奥深くへのアクセスが極めて困難であるため、多くの野鳥にとって安全な隠れ家となっています。ここでは、ニュージーランド北島で絶滅が危惧されているキタジマキーウィをはじめ、特徴的な鳴き声を持つハシブトホオダレムクドリ（マオリ語でKōkako）、カカ、ニュージーランドハヤブサ、希少なアオヤマガモなど、様々な固有種や絶滅危惧種が見られます。特に公園の北部は、ニュージーランド最大のハシブトホオダレムクドリの生息地として知られています。一方で、この地域にはニュージーランドクイナは生息していないことが確認されています。

テ・ウレウェラは、多様なアウトドア・アクティビティを楽しむことができる場所でもあります。ニュージーランド英語で「トランピング」と呼ばれるトレッキングは特に人気があり、全長46キロメートルに及ぶワイカレモアナ湖畔を巡るコースは、ニュージーランドを代表する長距離トレイルである「グレート・ウォークス」の一つに数えられています。その他にも、ワイカレイチ湖を周回する往復約2時間のコースや、ワイカレモアナ湖周辺に整備された所要時間の短い複数のトレッキングルートがあります。トレッキング以外では、広大なワイカレモアナ湖を利用したアクティビティが盛んです。美しい湖での釣りやカヤックを楽しむことができ、また、法的に認められた免許を持つ者であれば、狩猟を行うことも可能です。

現在は国立公園ではありませんが、テ・ウレウェラはその独特の地位のもと、かけがえのない自然環境とトゥホエ族の文化が共生する重要な保護地域として、その価値が守られています。

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