テーブルタップ

テーブルタップは、壁のコンセントから離れた位置にある電気器具や、複数の電気器具に同時に電力を供給するための機器です。一般的には「電源タップ」や「延長コード」とも呼ばれ、これらは日本で作られた言葉である和製英語です。

概要

典型的なテーブルタップは、一方の端に壁のコンセントに差し込むためのプラグがあり、もう一方の端に電気器具のプラグを差し込むためのコンセント差込口が複数付いています。ただし、単に1つのコンセントを延長するだけのものもあります。

延長機能を持たず、1つの壁コンセントを複数の差込口に分岐させるだけの製品は「コーナータップ」と呼ばれることもあります。

テーブルタップ自体は電気器具ですが、主に電線を介して電気を流す構造のため、電線等の素材によるわずかな抵抗損失を除けば、原則として電力消費はありません。ただし、後述するパイロットランプなどが搭載されている場合は、ごくわずかな電力を消費します。

日本国内で家庭用として流通している製品の多くは、最大電圧125V、最大電流15A、合計最大消費電力1500Wの仕様となっています。コードの長さは用途に応じて、短いもので10cm程度から、長いものでは20m程度まで幅広い種類が販売されています。

テーブルタップは、電気用品安全法において「特定電気用品」に指定されており、国の定める技術基準に適合している必要があります。

付加的な機能

テーブルタップには、利用者の利便性や安全性を高めるために、様々な機能が追加されている製品があります。すべての製品に搭載されているわけではありませんが、代表的なものとして以下のような機能があります。

プラグ抜け防止機構: 差し込んだプラグを回すなどの操作で内部のロックがかかり、誤ってプラグが抜けるのを防ぎます。
スイッチ: 接続された機器への電力供給をオンオフするためのスイッチです。タップ全体を一括で操作する全体スイッチと、コンセント差込口ごとに個別にオンオフできる個別スイッチがあります。個別スイッチを使えば、使用しない機器の電源を容易に切ることができ、待機電力の削減に役立ちます。安価な製品では、安全性の高い両切タイプ（電源線の両方を遮断）ではなく、片切タイプ（片方の線のみ遮断）が使われている場合もあります。
パイロットランプ: スイッチがオンになっているか、またはタップ本体に通電していることを視覚的に知らせるランプです。近年では消費電力の少ないLEDが主流ですが、物理的な表示で通電状態を示すことでランプをなくし、さらなる省エネを図った製品もあります。
シャッター: コンセント差込口に設けられたカバーです。プラグが差し込まれていないときに、内部の電極にホコリや虫などが侵入するのを防ぎ、ホコリと湿気による発火現象（トラッキング現象）のリスクを軽減します。両方の電極に同時にプラグが差し込まれないと開かない安全設計のものもあります。シャッターがない場合は、差込口を塞ぐ保護カバーも市販されていますが、定期的な交換が必要です。
簡易防水コンセント: プラグ差し込み時に、ゴムなどのカバーで接続部を覆い、水滴程度がかかる状況での防水性を備えた製品もあります。
雷サージ防御: 落雷による過大な電圧や電流が電源線を通じて侵入する際に、接続された機器を保護する機能です。内蔵された素子（バリスタなど）が過電圧・過電流を吸収または遮断することで機器へのダメージを軽減します。ただし、雷のエネルギーは非常に大きいため、建物の構造や雷の種類によっては十分に防ぎきれない場合もあります。また、一度大きな雷サージを受けた保護素子は劣化するため、機能が失われていることがあります。
サーキットブレーカー: 定格容量を超える電力が流れた際に自動的に電気を遮断し、過熱による発火を防ぐ安全機能です。雷サージ保護とは異なり、過負荷による遮断の場合は、原因を取り除いてからブレーカーをリセットすれば再び使用できるものがほとんどです。
アース線・接地極付きコンセント: 機器の漏電が発生した際に、安全に電気を地面に逃がすための機能です。通常、三相プラグの接地極に対応したコンセント形状をしており、アース線が付属しています。このアース線を建物の規定のアース端子に接続しないと、機能は有効になりません。
ノイズフィルター: 接続機器から電源線に漏れ出るノイズや、電源線に乗って侵入するノイズを軽減する機能です。家庭内LAN（PLC）やADSLなどの通信速度低下を防ぐ効果が期待できますが、家全体のノイズ対策としてはすべてのコンセントに対策が必要となる場合があります。
マグネット: 製品の背面に磁石が取り付けられており、スチール製の机やロッカーなどに簡単に固定して使用できます。木製など、磁力が効かない場所には使用できません。
通電連動装置: パソコンとその周辺機器向けに搭載されることが多い機能です。パソコンを接続した特定のコンセントに電力が流れるのを検知し、連動コンセントに接続されたモニターなどの機器に自動的に電源を供給します。パソコンの電源が切れると、それに合わせて連動コンセントへの供給も停止し、待機電力の削減に大きく貢献します。常に電源が必要な機器（FAXなど）は非連動のコンセントに接続します。
電気量表示装置: 接続機器の電流（A）や消費電力（W）などをリアルタイムで表示する機能です。おおよその電気使用量やコストを把握するのに役立ちますが、この機能自体に節電効果はありません。現在の使用電力を確認し、定格容量を超えていないか判断する目安にもなります。
ACアダプタ対応: ACアダプタはサイズが大きいものが多く、隣のコンセント差込口を塞いでしまうことがあります。この問題を解消するため、差込口の間隔を広くしたり、向きを工夫したりした製品があります。
USB給電対応: スマートフォンやタブレットなどのUSB機器を充電するためのUSB端子を搭載した製品です。標準的な5V/500mAだけでなく、急速充電に対応した高出力（5V/2Aや、9V/12Vなど）のものも普及しています。

特殊なタイプのテーブルタップ

一般的な形状以外にも、特定の用途に特化したテーブルタップが存在します。

巻き取り型: コードをリールに巻き取って収納できるタイプです。「電工ドラム」は主に工事現場などで使われ、防水性や耐久性の高いケーブル（キャブタイヤケーブル）が使用されます。使用時には発熱による被覆溶解を防ぐため、コードを全て引き出す必要があります。「コードリール」は家庭用のものを指すことが多いです。
OAフロア用: 近年のオフィスビルで採用されるOAフロア（二重床）の下に設置される配線用タップです。プラグではなく専用コネクタで接続され、幹線を経由して主電源設備に接続されます。
19インチラック用: サーバーなどを収容する19インチラックに取り付けて使用するタップで、「コンセントバー」とも呼ばれます。多くの差込口（10口以上）を持ち、高い定格容量やアース、抜け止め機能を備えています。ラック内の機器は磁力に弱いものが多いため、マグネット固定ではなくネジ止めで固定されます。

使用上の注意点

テーブルタップを安全に使用するためには、いくつかの重要な注意点があります。

定格容量の厳守: テーブルタップには「最大定格容量」が定められています。これを超える電力を使用すると、タップ内で過剰な熱が発生し、部品が損傷したり発火したりする危険があります。これは、複数の機器を接続して合計消費電力が定格を超える「たこ足配線」の場合だけでなく、定格内であっても、一つの差込口に大消費電力の機器（エアコン、電気ストーブ、ドライヤー、電子レンジ、電気ポット、電気炊飯器など）を接続することで、その差込口自体が耐えきれずに異常発熱する場合も同様です。
PSEマークの確認: 日本国内で販売される電気製品は、電気用品安全法の基準を満たし、PSEマークが表示されている必要があります。特に安価な製品の中には、基準を満たさない部品が使用されている危険性があるため、必ずPSEマークが付いている製品を選びましょう。
コードの扱い: コードを束ねたまま使用すると、発生する熱がこもりやすく、被覆が溶けたり発火したりする原因となります。特に長期間（10年以上）使用した製品は、内部の電線が部分的に断線している可能性があり、束ねた状態での発熱リスクが高まります。必ずコードは伸ばして使用してください。
* 水分・ホコリ: コンセント差込口やプラグの刃の間に水分やホコリが付着すると、電気がショートして異常発熱し、発火に至ることがあります。これを「トラッキング現象」と呼びます。特にプラグが差し込まれた状態でホコリがたまりやすいので、定期的に清掃を行い、湿気の多い場所での使用を避けましょう。シャッター付きや、未使用の差込口にフタをするなどの対策も有効です。

寿命と交換の目安

テーブルタップの寿命は、使用頻度や環境によって異なりますが、一般的に3年から5年程度での交換が推奨されています。ただし、コードの被覆に傷や破れがある、タップ本体とコードの接続部分に亀裂がある、コンセント差込口が熱で変形している、焦げ付いているなどの異常が見られる場合は、寿命にかかわらず直ちに使用を中止し、新しいものと交換してください。製品のコード部分に製造年が記載されている場合が多いので、確認する目安になります。

安全のためにも、古い製品や異常のある製品は使用し続けないことが重要です。

もう一度検索