テールスキッド

テールスキッド（尾橇）とは、航空機や装甲戦闘車両の歴史において見られる、機体や車体の後端に位置する、地面との接触から保護するための部材や機構を指します。日本語では「尾橇（びぞり）」と訳されます。現代ではこれを標準装備とする機体や車両は多くありませんが、それぞれの発展過程において特定の目的のために用いられました。

航空機におけるテールスキッド

航空機、特に飛行機におけるテールスキッドは、機体後部下面に設けられた突き出た構造です。第二次世界大戦頃まで主流だったレシプロエンジンのプロペラ機の多くは尾輪式でした。これは、機体の重心よりやや前方に主脚があり、尾部には小さな尾輪が付いている形式です。さらに古い時代には、尾部に車輪ではなく単なる棒、鉤、あるいはループ状の単純な部材が付けられており、これが尾橇、すなわちテールスキッドと呼ばれました。これは現代の尾輪のような緩衝機能や操舵機能を持たない、より原始的な構造でした。

現代の飛行機の多くは、主脚と機首下面に設けられた前脚を持つ前輪式を採用しています。しかし、胴体が長い一部の大型機、例えば旅客機、輸送機、爆撃機などにおいては、引き込み式のテールスキッドが装備されることがあります。これは、離陸時に機首を上げた際や着陸時に機体後部が滑走路に接触する、いわゆる「尻もち」をつく事故が発生する可能性が高まるため、それを防ぐ目的で設けられています。この格納式のテールスキッドは、飛行中は空気抵抗を減らすために機体内部に収納されます。代表的な装備機種としては、ボーイングの767-300や777-300、エアバスのA340などが挙げられます。

超音速旅客機コンコルドにも、同様に機体後部下面に構造が装備されていました。コンコルドは離着陸時に大きな迎え角を取る必要があるため、機体後部が地面に接触するリスクが高く、この構造が重要でした。ただし、コンコルドの当該部品は車輪がついており、前述の通常のテールスキッドよりも「尾輪」に近い構造でした。

装甲戦闘車両におけるテールスキッド

近代戦車は、第一次世界大戦中に塹壕などの障害物を乗り越え、敵陣を突破するために開発されました。初期の戦車は、深い塹壕や段差を越える能力を最優先しており、車体は前後方向に長く、その外周を無限軌道（履帯）が回るような構造が主流でした。その後、走行装置がより高速走行に適した箱型車体の中央下部に配置されるようになると、新たな問題が生じました。幅の広い塹壕や溝を乗り越え終える際や、高さのある障害物を越える際に、車体後端が地面に接地する、いわゆる「尻餅をつく」状態になりやすくなったのです。これは、当時の戦車の駆動力が不足しており、特にエンジンが後方に置かれて重心が後ろ寄りになっている場合、障害物を乗り越えた後に自力でスムーズに前進し続けることが難しかったためです。

この問題を解決するため、初期の戦車の車体後端には、上方に傾斜したソリ状の部品が装備されるようになりました。これが装甲戦闘車両におけるテールスキッド、すなわち尾橇です。これは、車体後部が溝に転落したり、地面に接触したりするのを防ぐストッパーのような役割を果たしました。

戦車の技術が発展し、エンジン出力や走行装置の性能が向上するにつれて、戦車が障害物を乗り越える能力自体が高まりました。その結果、テールスキッドのような補助的な装置は不要となり、第二次世界大戦以降に開発された車両ではほとんど装備されていません。

このように、テールスキッドは航空機と装甲車両という異なる分野で、それぞれ歴史の特定の段階において、機体や車体の後部を地面との接触から守るという同様の役割を担っていました。

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