デアドラ

アイルランド神話の悲劇のヒロイン、デアドラ

デアドラ（ディアドラ、デアドリーとも）は、アイルランド神話のアルスター伝説群に登場する、悲劇のヒロインとして知られています。

生まれと予言

デアドラは、フェリミ・マック・ディルの娘として生まれました。彼女が生まれると、ドルイド僧のカズバドが「彼女は類まれなる美女に成長するが、その美しさゆえに王と戦士たちが争い、命を落とすことになるだろう」と予言しました。この予言から、「災いと悲しみを招く者」「危険」という意味を持つデアドラという名が与えられました。

この予言を聞いた戦士たちは、デアドラを殺害することを提案しましたが、アルスター王のコノール・マック・ネッサが彼女を保護し、自ら育てて将来妻にすることを宣言しました。デアドラはコノール王のもとで、外界から隔離された砦の中で成長することになります。

ノイシュとの逃避行

成長したデアドラは、ウシュナハ族のノイシュと恋に落ちます。彼女はノイシュと彼の兄弟たちと共に、コノール王の元からスコットランドへと逃避行をします。しかし、コノール王の策略により、ノイシュとその兄弟たちは、ファーンマグの王イーガン・マクダルハクトによって殺害されます。この戦いによって、多くアルスターの戦士たちが命を落としました。

自殺

デアドラはコノール王の元へ連れ戻されますが、絶望の中で日々を過ごします。1年後、コノール王に嫌いなものを尋ねられたデアドラは、ノイシュを死に追いやったコノール王とイーガンだと答えます。これを聞いたコノール王は、デアドラをイーガンにも与えると宣言し、2人の間にデアドラを座らせて馬車を走らせ、彼女を嘲笑しました。この仕打ちに耐えかねたデアドラは、馬車から身を投げ、岩に頭を打ち付けて自害します。

デアドラの死後

デアドラの墓からはイチイの木が生え、同じくノイシュの墓から生えたイチイと枝を絡ませ、決して引き離すことができなかったと言われています。この物語は、彼女たちの悲恋を象徴するものとして語り継がれています。

関連作品

『デアドラ』：ウィリアム・バトラー・イェーツによる悲劇（1907年発表）
『悲しみのデアドラ』：ジョン・M・シングによる悲劇（1910年発表）

関連項目

ディアドラ (哨戒艦)：デアドラの名に由来するアイルランド海軍の哨戒艦（退役済）
ディアドラ (競走馬)：デアドラの名に由来する日本の競走馬
グラーニア：ケルト神話の「年配の王と若い婚約者、そして若い男性の三角関係」という類型譚のヒロイン
ヘレネー：トロイア戦争の引き金となった美女

デアドラの物語は、美しさ、愛、裏切り、そして運命の残酷さを描いた、アイルランド神話における最も悲劇的な物語の一つとして、今もなお多くの人々に語り継がれています。

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