ディスコ・デモリッション・ナイト

ディスコ・デモリッション・ナイト：球史に残る騒動

1979年7月12日、メジャーリーグベースボール（MLB）のシカゴ・ホワイトソックス対デトロイト・タイガースのダブルヘッダー第2試合は、前代未聞の事態により放棄試合となりました。この日、コミスキー・パークで開催されたのは、ラジオ局が主催した「ディスコ・デモリッション・ナイト」というイベントでした。

イベントの背景

このイベントは、シカゴのラジオ局WLUPのディスクジョッキー、スティーブ・ダールとそのパートナー、ギャリー・マイヤーの発案によるものでした。当時、ディスコミュージック全盛の時代に、ダールはディスコ嫌いを公言し、反ディスコのプロモーションを企画。ホワイトソックスの球団幹部に持ち込み、実現しました。

イベントの内容は、不要になったディスコのLPレコードを持参した観客の入場料を98セントに割引し、集められたレコードをダールが球場で爆破するというものでした。ダール自身も、ロッド・スチュワートのディスコヒット曲「Da Ya Think I'm Sexy?」のパロディを制作するなど、反ディスコ活動を展開していました。

このイベントが企画された背景には、当時の音楽シーンにおけるディスコの隆盛と、それに対する反発がありました。また、ホワイトソックス球団側も、集客を増やすための企画としてイベントに賛同しました。

試合の経過と結果

球団幹部は、イベントによる観客動員数を通常の倍近い35,000人と見込んでいました。しかし、当日集まった観客は70,000人を超え、収容人数を大幅に超える事態となりました。球場周辺は混乱し、入場できない観客がフェンスを乗り越えようとするなど、騒然とした状況となりました。

ダブルヘッダー第1試合は予定通り行われましたが、観客はスタンドからレコードや花火を投げ込むなど、すでに騒ぎ始めていました。試合はタイガースが勝利しましたが、それ以上に観客の興奮は高まっていました。

そして、第1試合終了後、グラウンドのセンター付近に集められたレコードが置かれ、ダールが登場。爆弾が仕掛けられ、大きな爆発とともにレコードは粉々に吹き飛びました。この爆発をきっかけに、数千人もの観客がグラウンドに乱入。バッティングケージが破壊され、ベースが盗まれるなど、暴徒と化した観客によって球場は荒らされました。

警察が出動し、騒ぎは鎮圧されましたが、第2試合の開始は大幅に遅れました。最終的に、試合は没収試合となり、タイガースの勝利となりました。

試合結果

ダブルヘッダー第1試合：タイガース勝利
ダブルヘッダー第2試合：タイガースの没収試合による勝利

事件後

この事件により、多数の逮捕者が出ました。翌日以降の試合は予定通り行われましたが、グラウンドの状態は酷いものでした。球団幹部は、MLBから一時的にブラックリストに掲載されるなどの処分を受けました。

また、当時ホワイトソックスに所属していたラスティ・トーレス選手は、この試合が自身が遭遇した3度目の没収試合となりました。

まとめ

ディスコ・デモリッション・ナイトは、音楽とスポーツ、そして社会現象が複雑に絡み合った、球史に残る事件となりました。この事件は、当時のアメリカ社会における音楽の多様性と、それに対する反発、そしてスポーツイベントにおける観客のあり方について、深く考えさせられる出来事と言えるでしょう。

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