ディストリクト

ディストリクト：世界各国の行政区画

「ディストリクト (district)」は、行政区画を指す用語として世界中で広く使用されていますが、その具体的な意味や範囲は国や地域によって大きく異なります。国によっては地方公共団体を構成する単位にもなっています。

イギリス

イングランドでは、ディストリクトは最も一般的な地方自治体の形態です。多くの地域では、カウンティ（郡）の下位に位置づけられ、税務、レジャーサービス、ごみ収集、住宅供給、都市計画など幅広い業務を担っています。財源はカウンシル税や事業用レイトによって確保されます。

ウェールズでは正式な行政区画としてのディストリクトはありません。単一自治体が22存在し、ディストリクトという用語は、都市内の区やその一部を非公式に指す場合もあります。

スコットランドでは、1975年から1996年まで地方自治体としてのディストリクトが存在していました。

北アイルランドは、26のディストリクトに区画されていますが、イギリス他地域と比較してカウンシルの機能は限定的で、教育や道路建設などの責任は負っていません。ごみ処理、レジャーサービス、建築管理などが主な業務です。地方税は土地不動産サービス局が徴収します。

フランス

フランスでは、18世紀には県の下位行政区画としてディストリクトが存在していましたが、その後郡に置き換えられました。19世紀には、複数のコミューンが連携する都市ディストリクトという形態がありましたが、現在はコミューン共同体などに発展的に解消されています。

アメリカ合衆国

アメリカ合衆国では、「ディストリクト」の用法は多岐に渡ります。

選挙区: 下院議員選挙区（コングレショナル・ディストリクト）として、各州に複数設けられています。
コロンビア特別区: ワシントンD.C.を指します。
特定目的ディストリクト: 教育、医療、公共交通など、特定分野に特化した公共団体です。学区（スクールディストリクト）が最も一般的です。地域によってはオーソリティと呼ばれることもあります。
非統治ディストリクト: ロサンゼルスなどでは、都市内の地域や近隣住区を指す非公式な名称として用いられています。
歴史地区: 国家歴史登録財制度における、歴史的建造物が集中する地区です。

カナダ

カナダでは、州によってディストリクトの定義が異なります。

アルバータ州: 非都市地域の公共団体として、自治区（ミュニシパル・ディストリクト）と改良区（インプルーブメント・ディストリクト）があります。
ブリティッシュコロンビア州: 市、町、村と同格の地区自治体（ディストリクト・オブ・～）、郡に相当するリージョナル・ディストリクト、選挙区、森林区、土地区、学区などがあります。
オンタリオ州: 州の下位区分ですが、法人化されていない地域です。
ノースウェスト準州: 歴史的には、準州設立以前の行政区画でした。
ケベック州: 都市内のバラをさらに細分した選挙区を指します。

オーストラリア

オーストラリアでは、州の選挙区として、また土地所有管理の単位としてディストリクトが用いられています。歴史的には、ニューサウスウェールズ植民地で様々な意味合いで用いられていました。

ニュージーランド

ニュージーランドでは、市ではない地方自治体を指します。比較的都市化が進んでおらず、人口も少ない地域を包含することが多いです。ただし、市の領域を指す場合や、複数の地方にまたがるディストリクトもあります。

南アフリカ共和国

南アフリカ共和国では、州の下位に位置する地区自治体（ディストリクト・ミュニシパリティー）が存在します。大都市圏では、異なる統治構造が採用されています。

このように、「ディストリクト」は国や地域によって多様な意味を持つ用語であり、その具体的な定義や機能を理解するには、それぞれの文脈を考慮する必要があります。

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