ディス・ノーツ・フォー・ユー

『ディス・ノーツ・フォー・ユー』は、1988年にカナダのシンガーソングライター、ニール・ヤングがニール・ヤング&ザ・ブルーノーツの名義でリリースしたスタジオアルバムです。しかし、後にバンド名に関する訴訟が発生し、再発版ではヤングのソロ名義に改められました。

アルバムの背景

ニール・ヤングは1980年代前半から所属していたゲフィン・レコードとの関係を終え、古巣のリプリーズ・レコードに戻りました。『ディス・ノーツ・フォー・ユー』は、その復帰を果たす初のアルバムとなります。音楽面では、ブルースやR&Bのエッセンスが豊かに取り入れられ、特に6人のホーンセクションが特徴です。さらに、本作においてはリック・ローザスとチャド・クロムウェルがヤングのレギュラーバンドに加わりました。

アルバムには、ヤングが1987年から88年にかけて行ったライヴ録音の要素も含まれ、発掘ライヴ・アルバム『ブルーノート・カフェ』にも収録されています。また、収録曲「オーディナリー・ピープル」は本作のために録音が行われたものの最終的には未収録となり、2007年の未発表音源集『クローム・ドリームスII』に初めて現れることになります。

タイトル曲とその影響

『ディス・ノーツ・フォー・ユー』のタイトル曲は、バドワイザーのスローガン「This Bud's for You」をもじったものです。この楽曲にはミュージックビデオも制作されたものの、その歌詞が「ペプシには歌わない、コークには歌わない、誰のためにも歌わない」といった内容から物議を呼び、初めはMTVでの放映が拒否されました。しかし、ヤングとマネージャーのエリオット・ロバーツはMTVを批判し、結局は放映が実現。1989年のMTV Video Music Awardsでは年間最優秀ビデオ賞を受賞するまでに至りました。

アルバムの評価と商業的成果

『ディス・ノーツ・フォー・ユー』は、商業的にはヤングが低迷していた時期の作品の一つとされています。アメリカのBillboard 200では61位を記録し、これにより彼は5作連続で全米トップ40入りを果たすことができませんでした。しかし、『ビルボード』のメインストリーム・ロック・チャートでは、アルバムからのシングル「ディス・ノーツ・フォー・ユー」が19位、「テン・メン・ワーキン」が6位に到達しました。

また、イギリスのアルバムチャートでも最高56位を記録し、3週にわたりトップ100入りを果たしましたが、全英トップ40には届きませんでした。この他、スウェーデンのアルバムチャートでも最高22位に到達しており、多少の成功を収めています。

音楽評論家のウィリアム・ルールマンは、『オールミュージック』においてこのアルバムに5点満点中3点を付け、「楽曲自体は平凡だが、演奏には活気がある」と評しました。彼はまた、このアルバムが商業的に不遇だったことを指摘し、ヤングが再び観客を呼び戻すためには以前の人気あった音楽スタイルに戻る必要があると述べています。

収録曲リスト

アルバムには以下の楽曲が収録されています：

- テン・メン・ワーキン - "Ten Men Workin'" - 6:29
- ディス・ノーツ・フォー・ユー - "This Note's for You" - 2:05
- クプ・ドゥ・ヴィル - "Coupe de Ville" - 4:18
- ライフ・イン・ザ・シティ - "Life in the City" - 3:13
- トワイライト - "Twilight" - 5:54
- マリード・マン - "Married Man" - 2:38
- サニー・インザイド - "Sunny Inside" - 2:37
- キャント・ビリーヴ・ユア・ライン - "Can't Believe Your Lyin'" - 2:58
- ヘイ・ヘイ - "Hey Hey" - 3:05
- ワン・シング - "One Thing" - 6:02

参加ミュージシャン

- ニール・ヤング - ボーカル、ギター
- フランク・サンペドロ - キーボード
- リック・ローザス - ベース
- チャド・クロムウェル - ドラムス
- スティーヴ・ローレンス - リード・テナー・サクソフォーン
- ベン・キース - アルト・サクソフォーン
- ラリー・クラッグ - バリトン・サクソフォーン
- ジョン・フーモ - トランペット
- トム・ブレイ - トランペット
- クロード・カリエ - トロンボーン

本作は、ニール・ヤングのキャリアにおける重要な作品であり、多くのリスナーに影響を与える要素が詰まっています。

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