ディッキー (衣服)

ディッキーとは：多様な顔を持つ装飾アイテム

ディッキー（dickey）とは、シャツの前身頃を模した胸当ての一種で、タキシードや燕尾服といった正装時に着用されます。付け襟と組み合わせて、あたかもシャツ全体を着ているかのように見せることが可能です。

ディッキーの歴史と素材

ディッキーは、シャツの洗濯が容易でなかった時代に生まれました。シャツの前身頃だけを取り外して洗濯することで、手間を省くという発想から生まれたのです。素材は布、紙、硬質プラスチックなど様々です。

セルロイド製ディッキー：19世紀後半に登場し、防水性と汚れにくさから人気を博しました。シワになりにくく、常に真っ白な状態を保てるため、フォーマルな装いに重宝されました。ただし、硬くて扱いにくいという欠点もあり、コメディのネタにも利用されました。
紙製ディッキー：リネンの礼服のコストを抑えるために、劇場やサービス業などで使用されました。ウェイターやドアマンなどが着用することで、制服としての体裁を保ちました。現在でも生産されています。
布製ディッキー：ドレスシャツの前身頃やフリルシャツなど、様々なスタイルで使用されました。現代でも、タートルネックセーター風のディッキーなどが見られます。

ディッキーの多様な用途

ディッキーは、フォーマルウェアだけでなく、現代ファッションや各国の伝統衣装にも取り入れられています。

現代ファッション：近年、ディッキーはアクセサリーとして人気を集めています。付け襟やネックウォーマーとして、様々な素材やデザインのものが登場しています。
伝統衣装：アルメニアやギリシャ、サーミ人の伝統衣装にもディッキーが見られます。各文化において、装飾性や機能性など、様々な役割を果たしています。

各国の伝統衣装におけるディッキー

アルメニア：女性はローカットのアウタードレスの下に、刺繍が施されたディッキースタイルのシャツを着用します。
ギリシャ：未亡人は喪章として、黒いディッキーを着用します。
サーミ：男女ともに、チュニックの下にウール製のディッキーを着用します。装飾が施されたものが多く、目を引くデザインが特徴です。

まとめ

ディッキーは、その時代や文化に合わせて様々な形を変えてきました。フォーマルウェアから現代ファッション、伝統衣装まで、幅広い分野で活躍するディッキーは、まさに多様な顔を持つ装飾アイテムと言えるでしょう。

もう一度検索