ディック・ブルーナ

ディック・ブルーナの人生と作品

ディック・ブルーナ（本名：ヘンドリック・マフダレヌス・ブルーナ）は、1927年にオランダのユトレヒトで生まれました。彼の父親は出版業を営んでおり、その影響で幼いころから本や絵に親しんで育ちました。静かで内向的な少年だったブルーナは、自然と絵を描くことに夢中になり、スケッチブックを手放すことはありませんでした。

幼少期の影響

ブルーナが中学校に通っていた際、父の書棚にはレンブラントやファン・ゴッホの画集があり、その鮮やかな色彩に強い感銘を受けます。彼は、ブルーナ社の専属デザイナーの指導を受けながら油絵を学び、また音楽にも興味を持ち、特にシャンソンに心惹かれました。しかし、立身出世を期待されていたため、高校を退学し、画家を目指すことを決意。両親と対立しつつも、自分の進む道を選びました。

アーティストとしての修行

18歳の時、オランダ及び他国の出版社で研修を受け、出版の知識を深めました。特にパリでは、フェルナン・レジェやアンリ・マティスなどの近代芸術に触れ、自身のスタイルに良い影響を与えました。20歳でオランダに戻ると、父にアーティストとしての道を歩むことを認めさせます。アムステルダムの国立美術アカデミーに入学しましたが、学びの内容に疑問を感じ、すぐに退学。その後は、多くのアーティストの作品を研究し、自らのデザインスタイルを発展させていきました。

グラフィックデザイナーとして

1950年代初頭、ブルーナ社に入社した彼は、書籍の装丁を手がけるようになります。特に、シ簡潔で視覚的にひきつけるデザインが評価され、年間100冊以上の装丁を手がけました。また、ブルーナ社のシンボルキャラクターである「ブラック・ベア」をデザインし、さまざまな媒体で使用されることとなりました。

ナインチェの誕生

1955年には、子ども向けの絵本『nijntje』（日本語では「ミッフィー」）を発表。魅力的なキャラクターとシンプルな絵柄は、当時の写実的な描写が主流だった子ども向け作品とは一線を画し、即座に人気を博しました。彼の独自の色使い「ブルーナカラー」により、他にはない魅力が生まれました。1963年には日本語版も出版され、多くの子供たちの心をつかみました。

独立と社会貢献

1971年には、友人と共に著作権を管理する会社を設立し、1975年にはブルーナ社を退職。独立後も子供たちへの読み聞かせイベントを通じて、絵本への情熱を伝え続けました。日本においても「うさこちゃん」として親しまれ、1998年には切手のデザインを手がけるなど、幅広い活動を行いました。

最晩年と影響

2006年には自身の作品を常設展示する「ディック・ブルーナ・ハウス」が開館し、2011年には引退。その後も創作を続けていたものの、2017年に享年89歳でこの世を去りました。彼の作品に影響を受けたアーティストは多く、特に日本でもそのスタイルは多くの支持を集めています。シンプルでありながら深いメッセージを持つブルーナの作品は、世代を超えて愛され続けているのです。

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