ディディエ・ロックウッド

ディディエ・ロックウッド

ディディエ・ロックウッド（Didier Lockwood、1956年2月11日 - 2018年2月18日）は、フランスを代表するジャズ・ヴァイオリニストです。彼はそのキャリアを通じて、特に電気的に増幅されたエレクトリック・ヴァイオリンを駆使した表現で知られ、多様な音響の探求に情熱を注ぎました。

1970年代、ロックウッドは革新的なプログレッシブ・ロックおよびフュージョン・バンドとして名を馳せていたマグマにメンバーとして参加し、その独特なサウンドに貢献しました。この時期に培われた実験精神と、ヴァイオリンという楽器の可能性を広げようとする彼の試みは、その後の音楽活動の礎となります。

1979年、彼は自身のリーダーとしての道を歩み始め、最初のアルバム『ニュー・ワールド』を発表しました。この作品を皮切りに、ロックウッドは生涯にわたり20枚を超えるリーダー・アルバムを精力的に制作・録音し、その多才な作曲能力と演奏技術を披露しました。彼の作品はフュージョンを核としながらも、ジャズ、クラシック、ワールドミュージックなど、様々な要素を取り入れたクロスオーバースタイルを展開しました。

1994年からは約2年間、活動の拠点をアメリカ合衆国ニューヨークへ移しました。世界的なジャズの中心地であるニューヨークでの生活は、彼の音楽に新たな影響を与えたことでしょう。この滞在期間中には、『New York Rendez-Vous』や『ストーリーボード』といった優れたアルバムが誕生しています。

ロックウッドが音楽家として影響を受けた人物には、フュージョン・ヴァイオリンの先駆者であるジャン＝リュック・ポンティがいます。特に、フランク・ザッパの楽曲を演奏したポンティのアルバム『キング・コング』を聴いたことが、彼がエレクトリック・ヴァイオリンという楽器に深く傾倒するきっかけとなったと言われています。また、同じフランス出身で「ジャズ・ヴァイオリンの父」と称される伝説的な音楽家、ステファン・グラッペリも彼にとって重要な師の一人でした。ロックウッドはグラッペリへの深い敬意を示しており、2000年にはトリビュート・アルバムを制作・発表しています。

多忙な演奏活動と創作活動を続ける中で、ディディエ・ロックウッドは2018年2月18日、パリにて心臓発作のため、惜しまれつつ急逝しました。享年62歳でした。彼の突然の死は、世界のジャズ界、特にヴァイオリン奏者のコミュニティに大きな衝撃を与えました。しかし、彼が残した数々の革新的な録音と、エレクトリック・ヴァイオリンによる表現の可能性を切り拓いた功績は、今なお多くの音楽家に影響を与え続けています。

ディスコグラフィ（抜粋）

リーダー・アルバム

Thank you friends (1978年) ※フランソワ・カーンと連名
Surya (1978年)
『ニュー・ワールド』 - New World (1979年)
You Better Fly Away (1979年)
Swing strings system (1979年)
Live in Montreux (1980年)
Fusion (1981年) ※クリスチャン・ヴァンデ、ヤニック・トップ、ブノワ・ヴィドゥマン連名
One World In Eight (1981年) ※The String Summit名義
Fasten Seat Belts (1982年)
The Kid (1983年)
Trio (1983年) ※フィリップ・カテリーン、クリスチャン・エスクーデ連名
Didier Lockwood Group (1984年)
Out Of The Blue (1985年)
『ヴァイオリン・サミット』 - Rhythm & BLU (1985年) ※ジョン・ブレイク、マイケル・ウルバニアク連名
Absolutely Live (1986年) ※UZEB / Didier Lockwood名義
『1.2.3.4』 - 1.2.3.4 (1987年)
Phoenix 90 (1990年)
Lune froide (1991年) ※映画サウンドトラック
Caron - Écay - Lockwood (1992年) ※Alain Caron、Jean-Marie Ecay連名
DLG (1993年)
Solal - Lockwood (1994年) ※マーシャル・ソラール連名
Le onztet de violon jazz (1994年)
New York Rendez-Vous (1995年)
Chansons pour les enfants (1995年)
『ストーリーボード』 - Storyboard (1996年)
『ラウンド・アバウト・サイレンス』 - Round About Silence (1998年)
Best of Didier Lockwood (1999年) ※コンピレーション
『トリビュート・トゥ・ステファン・グラッペリ』 - Tribute to Stéphane Grappelli (2000年)
Omkara (2001年) ※ラグナート・マネ連名
Les Enfants de la pluie (2003年) ※映画サウンドトラック
Globe-Trotter (2003年)
Hypnoses (2004年) ※コンピレーション
Concerto pour violon et piano (2005年)
Concerto pour violon, Les Mouettes (2005年)
Concerto pour piano (2005年)
For Stéphane (2008年)
À la récré (2009年)
Lockwood Brothers (2009年) ※フランシス・ロックウッドとのデュオ
L'Orchestre des aveugles (2015年)
Apesantar (2016年)
Open Doors (2017年)

参加アルバム

マグマ - 『ライヴ!』(1975年), 『幻の音像』(1977年) 他
ピエール・ムーランズ・ゴング - 『ダウンウインド』(1979年)
ザオ - 『カワナ』(1976年) 他
ヤレク・スメタナ - A Tribute To Zbigniew Seifert - Jarek Śmietana Band (2009年)
ビリー・ハート - 『オシュマレ』(1985年)
アラン・サイモン - Excalibur (Le Concert Mythique) (1999年)
ロジャー・ホジソン - Open the Door (2000年)
* Nougarologie - Et me voici (2012年)

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