ディートリヒ1世 (上ロートリンゲン公)

ディートリヒ1世・フォン・ロートリンゲン：激動の時代を生きた公爵

ディートリヒ1世・フォン・ロートリンゲン（965年頃 - 1026/27年）は、上ロートリンゲン公フリードリヒ1世と、フランス王ユーグ・カペーの姉ベアトリクスの息子として生まれました。978年に父が亡くなると、上ロートリンゲン公とバル伯の地位を継承し、その治世は激動に満ちたものでした。

若き公爵の苦難

当時の慣習では、16歳以上の公子や伯子は独立して統治することができましたが、ディートリヒが公位を継いだ当初、母ベアトリクスが摂政として実質的な権力を握っていました。989年頃、ディートリヒは母から権力を奪取し、名実ともにロートリンゲン公となります。その手段については諸説あり、母を修道院に幽閉した、あるいは毒殺したという説も存在します。

985年、ディートリヒは西フランク王ロテールとの戦いで敗れ、捕虜として投獄されるという苦難を経験します。釈放後も、神聖ローマ皇帝ハインリヒ2世とルクセンブルク家との紛争に巻き込まれ、再び捕らえられ、多額の保釈金を支払うことになりました。さらに、ブルグント公国でも捕らえられたりと、苦難の連続でした。

外交手腕と晩年

苦難を乗り越え、ディートリヒは外交手腕も発揮しました。当初対立していたコンラート2世を新たな皇帝として認め、支持することで、自身の地位を安定させました。

晩年、ディートリヒは息子フリードリヒを後継者としましたが、フリードリヒは父に先立ち1026年に亡くなってしまいます。その後、ディートリヒ自身も1026年4月11日から1027年1月2日の間に死去し、公位は孫のフリードリヒ3世が継承しました。

結婚と子女

ディートリヒは、リュネヴィル・メッツ伯フォルマー1世の娘リヒルデ・フォン・ブリースガウと結婚し、以下の子女をもうけました。

フリードリヒ2世：上ロートリンゲン公（父と共同統治）
アダルベロ：メッツ司教に指名されるも、叙階直後に死去
アーデルハイト：アーロン伯ヴァルラム1世と結婚
ヒルデガルト：アンジュー伯フルク3世と結婚

妃リヒルデは、フォルマー1世、フォルマー・リュネヴィル、フォルマー・フォン・ヴォルムスといった人物の子孫にあたります。

ディートリヒ1世の生涯は、中世ヨーロッパの権力闘争、領土紛争、そして家族の死といった要素が複雑に絡み合ったものでした。彼は激動の時代を生き抜き、上ロートリンゲン公としての地位を確立しましたが、その道のりは決して平坦ではありませんでした。彼の生涯は、中世ヨーロッパの歴史を理解する上で重要な一章と言えるでしょう。

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