ディーノ・グランディ

ディーノ・グランディ伯爵：イタリアの政治家、波乱の生涯

ディーノ・グランディ伯爵（1895年-1988年）は、イタリア王国を揺るがした政治家の一人です。ボローニャ近郊の裕福な家庭に生まれた彼は、ボローニャ大学で法学を学び、ジャーナリストとしても活動しました。第一次世界大戦に従軍した経験は、彼の政治観に大きな影響を与えたと言われています。

当初は左翼的な活動を行っていたグランディですが、第一次世界大戦へのイタリア参戦を主張したベニート・ムッソリーニに共鳴し、やがてファシスト党に身を投じます。エミリア＝ロマーニャ州でのファシスト運動の指導者として活躍した彼は、左翼勢力からの激しい攻撃にさらされることになります。銃撃を受けるなど、危険な状況の中で活動していた彼は、1921年の総選挙で代議院議員に当選、ムッソリーニ政権下で要職を歴任します。

グランディの政治経歴は華々しいものでした。1924年には内務次官、1925年には外務次官に就任し、1929年には外務大臣に昇進します。外相としては、イタリアの中立政策の維持、特にイギリスとの良好な関係に尽力しました。しかし、国際連盟への協調姿勢を示したことがムッソリーニの反感を買い、1932年に更迭されます。その後は駐イギリス大使として、第二次世界大戦直前の国際情勢の緊迫の中で、イギリスとの関係改善に務めました。

1939年に駐英大使を退任したグランディは、法相、そしてファシズム政権下の下院議長に相当する工業および農業のファシスト組合総連合会長を歴任しました。しかし、彼の政治家としての生涯における最大の転換点は、1943年7月24日にファシズム大評議会で起こります。彼はムッソリーニ首相の解任動議を提出、可決に導いたのです。このグランディ決議は、ムッソリーニ政権崩壊の直接的な引き金となり、イタリアの歴史に大きな転換をもたらしました。

ムッソリーニ解任後、グランディは連合国との終戦交渉のためスペインに亡命し、イタリア社会共和国による逮捕を免れました。戦後、イタリアが共和制に移行すると、ファシズム時代の行為によって懲役刑を宣告されましたが、すぐに恩赦を受けます。スペイン、ポルトガルを経て、アルゼンチンやブラジルで農園経営に携わった後、イタリアに帰国。元外務大臣としての年金を受け取りながら、モデナで養豚業を営み、1988年にボローニャでその生涯を終えました。

ディーノ・グランディの生涯は、イタリアの激動期を象徴するものでした。左翼からファシズム、そしてムッソリーニ解任へと転身した彼の複雑な経歴は、20世紀イタリアの政治史を理解する上で重要な鍵となります。彼の決断がイタリア、ひいてはヨーロッパの歴史に与えた影響は計り知れません。彼の行動は賛否両論ありますが、彼の行動なくして、イタリアの歴史は大きく異なっていた可能性が高いでしょう。

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