ディーノ・リージ

ディーノ・リージ：イタリアンコメディの巨匠

ディーノ・リージ (1917年-2008年) は、イタリアを代表する映画監督、脚本家であり、マリオ・モニチェリ、ルイジ・コメンチーニ、ナンニ・ロイ、エットーレ・スコラらと共に「イタリア式コメディ」を牽引した重要人物の一人です。医学の道を歩み始めたリージが、どのようにして映画界の巨匠へと転身し、後世に影響を与える作品の数々を生み出したのか、その生涯と作品について詳しく見ていきましょう。

医学から映画批評へ、そして監督への道

ミラノに生まれたリージは、スカラ座専属医師であった父親の影響もあり、当初は医学の道を志していました。しかし、12歳で父親を亡くしたリージは親戚や友人たちに育てられ、精神科医としてのキャリアをスタートさせます。

並行して映画批評にのめり込み、自らニュース記事やシナリオを書き始めるようになりました。その才能は同郷の友人である脚本家アルベルト・ラットゥアーダの目に留まり、1940年、マリオ・ソルダーティ監督作品『小さな古風な世界』で助監督として映画界に足を踏み入れることになります。第二次世界大戦中はスイスへ移住し、ジャック・フェデーなど著名な映画監督から指導を受けました。戦後には、数多くの短編映画やドキュメンタリー作品を制作し、着実に経験を積んでいきます。

イタリアンコメディ黄金期の到来

イタリアへ帰国したリージは、1951年、『ギャングと過ごすヴァカンス』で長篇劇映画監督としてデビューを果たします。その後、『パンと恋と…』（日本公開題『殿方ごろし』）の大ヒットにより、リージの名は一気に世間に知れ渡ることになります。

彼の真価が最も発揮されたのは、代表作『貧しいが美しい男たち』三部作でしょう。この作品群はイタリアの社会風俗を見事に描き出し、国民的な人気を博しました。

さらに、『困難な人生』、『追い越し野郎』、『怪物たち』、『女の香り』など、数々の傑作を生み出し、イタリアンコメディ黄金期を彩りました。『女の香り』は1992年、ハリウッドで『セント・オブ・ウーマン/夢の香り|セント・オブ・ウーマン_夢の香り』としてリメイクされ、世界的な成功を収めました。

晩年と功績

リージは、85歳でヴェネツィア国際[[映画祭]]で功労金獅子賞を受賞し、その偉大な功績を称えられました。2008年に91歳で亡くなるまで、映画界に多大な貢献を果たしました。ローマ市長ジャンニ・アレマンノは、彼の死を「イタリアは、自国の映画と文化にとって、気品と生命力に溢れる父親を失ってしまった」と悼みました。

彼の作品は現在も高い評価を受け続け、イタリアンコメディの礎を築いた巨匠として、多くの映画人に影響を与え続けています。彼の作品群は、時代を超えて人々の心を捉え、笑いと感動を与え続けているのです。

主なフィルモグラフィ

リージ監督作品の数々は、イタリア社会の喜劇と悲劇をユーモラスに、また繊細に描き出しています。ここではその中でも特に代表的な作品を挙げ、それぞれの作品が持つ魅力を簡潔に説明します。

『貧しいが美しい男たち』(1956年): イタリアの庶民の生活をユーモラスに描いた代表作。三部作として制作されたこの作品は、国民的な人気を博しました。
『追い越し野郎』(1962年): 若者と中年の男のロードムービー。軽妙な会話と美しいイタリアの風景が魅力です。
『怪物たち』(1963年): イタリア社会の様々な欠点を風刺したオムニバス作品。リージの社会派的な一面を見ることができます。
『女の香り』(1974年): 失明した元軍人と若い運転手の交流を描いた感動的なドラマ。ハリウッドでリメイクされたことでも有名です。

これらの作品以外にも、リージは多様なテーマの作品を手がけました。彼の作品群は、イタリアンコメディの多様性を示す重要な資料と言えます。数々の受賞歴や、後世への影響力の大きさからも、彼の功績がいかに大きかったかを伺い知ることができます。ディーノ・リージという巨匠は、これからも多くの人々に愛され続けることでしょう。

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