ディーン・ディクソン

チャールズ・ディーン・ディクソン（1915年1月10日 - 1976年11月3日）は、20世紀に活躍したアメリカ合衆国の指揮者であり、音楽教育者としても知られています。

生い立ちと初期のキャリア

1915年、ニューヨークで生まれたディクソンは、幼い頃から音楽の才能を発揮しました。ジュリアード音楽院に進学し、アルバート・シュテッセルに指揮法を師事。1939年にはコロンビア大学大学院で音楽教育学の修士号を取得し、音楽家としての基礎を築きました。

1931年には早くも自らオーケストラと合唱団を組織し、精力的に演奏活動を開始。その才能は次第に注目を集め、1941年5月には転機が訪れます。彼が組織したオーケストラの公演に、当時のファーストレディであるエレノア・ルーズベルトが臨席。彼女は自身の連載コラム「My Day」でその感想を掲載し、ディクソンの名は全米に知れ渡ることとなりました。さらに、その評判を聞いた巨匠トスカニーニの推薦により、NBC交響楽団を指揮する機会を得て、ニューヨーク・フィルハーモニックにも客演するなど、アメリカ国内でのキャリアを着実に築き上げていきました。

人種差別の壁

しかし、ディクソンを待ち受けていたのは、人種差別の厳しい現実でした。NBC交響楽団の一部白人奏者が、アフリカ系の指揮者の下で演奏することを拒否。NBC社長に談判するも受け入れられず、彼らはニューヨーク音楽家組合に訴えるという事態に発展しました。この事件をきっかけに、ディクソンはアメリカ合衆国でのキャリアを断念せざるを得なくなりました。

ヨーロッパでの活躍

1949年、ディクソンは活動の拠点をヨーロッパに移し、新たな道を切り開きます。1953年から1960年までエーテボリ交響楽団の首席指揮者を務め、その手腕を発揮。1961年にはフランクフルト放送交響楽団の音楽監督に就任し、国際的な評価を確立しました。1963年には、オーストラリアのシドニー交響楽団の首席指揮者に迎えられ、1967年まで務めました。

日本との関わり

1968年には来日し、NHK交響楽団を指揮。難病を発病し引退間近であったピアニスト・田中希代子と共演し、日本の聴衆に感銘を与えました。

その後

1970年代からは、サンフランシスコ、フィラデルフィア、シカゴのオーケストラに客演するなど、アメリカ国内での活動も再開。しかし、1976年、スイスのチューリッヒで客死しました。

チャールズ・ディーン・ディクソンは、その才能と努力によって音楽界で確固たる地位を築きながらも、人種差別という不条理に翻弄された人物でした。しかし、彼の音楽に対する情熱と信念は、多くの人々に感銘を与え、記憶されています。

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