デイヴ・ヴァレンティン

デイヴ・ヴァレンティン：ラテン・ジャズ界を彩ったフルートの巨匠

デイヴ・ヴァレンティン（Dave Valentin）は、1952年4月29日にニューヨークで生まれた、プエルトリコ系のジャズ・フルート奏者です。2017年3月8日に64歳で亡くなるまで、ラテン音楽とジャズを融合させた独自のスタイルで、数々の名演を繰り広げました。

生い立ちと音楽との出会い

プエルトリコ人の両親のもとに生まれたヴァレンティンは、幼い頃から音楽に親しんで育ちました。10歳になる頃には、コンガやボンゴなどのラテン・パーカッションを演奏し、12歳でラテン・クラブで働くなど、早くから音楽の世界に足を踏み入れました。より専門的な音楽教育を志し、ジュリアード音楽院出身のヒューバート・ロウズに師事し、フルートに転向しました。

ロウズは、ヴァレンティンのフルートの音色に感銘を受け、当時ビッグ・バンドで一般的だったサクソフォーン奏者との兼任を勧めませんでした。ヴァレンティンは、当初ラテン音楽の影響を受けていましたが、次第に師であるロウズらのアメリカン・ジャズに傾倒していきました。

ラテン・ジャズとの出会いと独自の奏法の確立

1940年代以降の音楽シーンでは、ディジー・ガレスピーやチャノ・ポソらが、ジャズにラテン・リズムを融合させたラテン・ジャズという新しい音楽を推進していました。マチートやマリオ・ブーザらのアレンジメントも加わり、この新しいスタイルは多くのファンを獲得し、ヴァレンティンのような若いアーティストを惹きつけました。

プロとしてラテン・バンドで演奏するようになったヴァレンティンは、打楽器のような音の刻み方や、自身の声を音色に混ぜるなど、独自のフルート奏法を編み出しました。そのテクニックを武器に、ジャズだけでなくR&B、サルサ、メレンゲなど幅広いジャンルの音楽を取り込み、アメリカのみならず世界中でその名を知られるようになりました。

GRPレーベルとの契約と成功

1977年、25歳の時にリカルド・マレロのグループでレコーディング・デビューを果たし、同時にノエル・ポインターのアルバムにも参加しました。その後、デイヴ・グルーシンとラリー・ローゼンに見出され、設立されたばかりのGRPレーベルの最初のアーティストとして契約しました。GRPでは、16枚のアルバムをリリースし、ポップス、R&B、ブラジル音楽などの影響をラテンやスムーズ・ジャズと組み合わせた、滑らかで聴きやすいクロスオーヴァー・ジャズを確立し、ラテン・ジャズ界で最も売れるミュージシャンの一人となりました。

1985年にはグラミー賞にノミネートされ、7年間にわたり「Jazziz Magazine Readers」の「リーディング・ジャズ・フルーティスト」に選ばれました。1988年には、ジャズ・クラブ「ブルーノート」に出演し、そのライブ録音は『デイヴ・ヴァレンティン・ライヴ・アット・ザ・ブルー・ノート』としてリリースされました。

ハービー・マンとの共演と晩年

1990年には、ジャズ・フルートの先駆者であるハービー・マンとのセッションを録音し、アルバム『トゥー・アミーゴス』として発表しました。1996年にはRMMレコードから『Primitive Passions』を、1999年にはコンコード・ジャズから『Sunshower』をリリースし、ヒューバート・ロウズの影響を受けつつ、スムーズ・ラテン・ジャズの色彩をより強く打ち出しました。

2000年には、ラテン音楽の巨匠であるティト・プエンテとの共演が、ラテン・ジャズのドキュメンタリー映画『Calle 54』に収録されました。また、キューバ出身のパーカッション奏者ホレイシヨ・エル・ネグロ・ヘルナンデスや、女性ボーカリストのミオ・ソティスとツアーを行いました。

2005年からは、ハイノート・レコードと契約し、『World On A String』 (2005年)と『Come Fly With Me』 (2006年)をリリースしました。ピアニストのビル・オコンネルとのコラボレーションも行い、2006年のラテン・グラミー賞にノミネートされました。

2017年3月8日、パーキンソン病と脳卒中の合併症により、64歳でこの世を去りました。

デイヴ・ヴァレンティンの遺産

デイヴ・ヴァレンティンは、ラテン・ジャズ界に多大な貢献をした偉大な音楽家です。彼の音楽は、今もなお多くの人々に愛され、次世代の音楽家たちに影響を与え続けています。

独自のフルート奏法
ラテン・ジャズと多様なジャンルの融合
数々の名盤のリリース
後進の育成

これらの功績を通して、彼は音楽史にその名を刻み、不朽の存在として語り継がれるでしょう。

もう一度検索