デコカセットシステム

デコカセットシステム

デコカセットシステムは、1980年9月にデータイーストが開発したアーケードゲーム基板であり、日本初の汎用システム基板として完成したものです。初期には「DSシリーズ」「DCシステム」と呼ばれていましたが、後に「デコカセットシステム」として知られるようになりました。通称「デコカセ」とも呼ばれています。

概要

アーケードゲーム開発において、ハードウェアとソフトウェアの共通部分を最大限に活用し、ゲームごとに異なる部分だけを入れ替えるという考え方は、以前から存在していました。デコカセットシステムは、その概念を具現化した初期のシステムの一つと言えます。

このシステムの特徴は、ゲームデータの入れ替えに高価なROMではなく、安価なカセットテープを採用した点です。カセットテープに暗号化されたプログラムやデータを読み込ませることで、ゲームの切り替えを可能にしました。また、マザーボードにはプロテクトドングルが搭載されており、コピー対策も施されていました。しかし、初期に採用されたコンパクトカセット（通称「大カセ」）は市販のオーディオカセットテープと同じであったため、コピーが容易であるという問題が発生しました。そのため、後に独自仕様の超小型カセットテープ（通称「小カセ」）が導入されました。国内では全てのタイトルにおいて「大カセ」と「小カセ」の両方がリリースされましたが、海外では「小カセ」のみが流通しました。

各タイトルは、カセットテープと、コピー防止用の樹脂で固められたキーモジュールと呼ばれる基板がセットで提供されました。これらをシステム基板にセットして起動します。電源投入後、「DECO CASSETTE SYSTEM」のタイトルが表示され、テープが巻き戻された後に自動再生が開始されます。下部のカウントが「001」になるまでカウントダウンが進み、「001」になった直後に再度テープが巻き戻され、ゲームが起動するという仕組みになっています。

カセットテープの採用により、ゲームタイトルの入れ替えが安価にできるというメリットがありましたが、電源投入時に約5分程度のロード時間がかかるというデメリットもありました。カセットデッキは独自のものが採用されており、巻き戻し、一時停止、リトライなどを基板側から制御できるフルロジックタイプでした。これにより、リードエラーが発生した場合でも自動で巻き戻してエラー発生箇所から再開する機能が搭載されていました。

初期には、システムを組み込んだテーブル筐体（大型の「デコカセ大基板」内蔵）が「DSシリーズ」として提供されました。価格は高めでしたが、ゲーム単体の価格が安く、業界から好評を博しました。その後、汎用筐体向けの小型化されたシステム基板（通称「デコカセ小基板」）が「DECO MULTI」としてリリースされ、普及しました。

近年、経年劣化により正常に稼働できる筐体が減少しており、第三者による保存活動が進められています。また、テープデッキをEPROM基板や他のメディアに置き換える研究も行われています。

ソフトウェア

デコカセットシステムのソフトウェアはオレンジ色の紙箱に収められ、ナンバリングされています（欠番あり）。箱の中には、インストレーションカード、説明書、ディップスイッチ表、カセットテープ、キーモジュールが入っています。国内版は「小カセ」版と「大カセ」版の両方がリリースされ、海外版は「小カセ」版のみがリリースされました。

ソフトウェアにはリージョンロックが施されており、起動には対応するリージョンBIOS ROMとキーモジュールが必要になります。ソフトウェアの末尾にはリージョン記号として、A(JP)、B(US)、C(UK)、D(GE)、EI(FR)、F(MULTI)のいずれかが記載されています。

デコカセットシステムではなくEPROMで実装された基板も存在します。

ソフトウェアは全て縦画面であり、横画面のソフトはリリースされていません。

注釈

デコカセットシステムのソフトウェア一覧については、資料を参照ください。

出典

レトロゲームアラカルト＠沼津　報告／資料公開 - 特定非営利活動法人ゲーム保存協会
イベント【アーケードゲーム保存の問題と対策】実施報告 - 特定非営利活動法人ゲーム保存協会
凸SDメディアコンバータ解説 商品サポートWiki -ひげねこ堂

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