デザートヘアリースコーピオン

デザートヘアリースコーピオン

デザートヘアリースコーピオン（学名：Hadrurus arizonensis）は、サソリ目スナサソリ科に分類される大型のサソリです。北米大陸の砂漠地帯に生息し、その独特な生態と形態で知られています。英名ではジャイアントデザートヘアリースコーピオンとも呼ばれています。

分布と生息地

デザートヘアリースコーピオンは、ソノラ砂漠とモハーヴェ砂漠を中心に分布しています。具体的には、メキシコのソノラ州やバハ・カリフォルニア州のカリフォルニア湾沿岸地域、アメリカ合衆国のアリゾナ州西部、カリフォルニア州南部のコロラド砂漠とモハーヴェ砂漠、ネバダ州南部、ユタ州南西部などで確認されています。

標高900mから1800mの砂漠地帯の谷やその周辺、小さな洞窟や岩の割れ目などを住処としており、特に高温で乾燥した気候への適応能力が高いのが特徴です。近年では郊外にも進出しており、植物の近くや芝生などで見かけることもあります。

同じ地域に生息するサソリとしては、デューンスコーピオン、イエローデビルスコーピオン、ストライプテールスコーピオンなどが挙げられます。

形態

デザートヘアリースコーピオンは、北米に生息するサソリの中では最大級の大きさを誇り、全長は平均で約14cmに達します。体色は一般的に黄色で、背面に黒い模様が入りますが、中には黒くない個体も存在します。その名前の由来となっているのは、体表を覆う茶色の毛です。この毛は、地中のわずかな振動を感知するのに役立ち、獲物や外敵の接近を察知するセンサーとしての役割を果たしています。

雌は雄に比べて体が幅広く、ずんぐりとした体型をしています。一方、雄は雌よりもハサミが大きいという特徴があります。

類似種としては、Hadrurus spadix が挙げられますが、Hadrurus spadix は背面だけでなく頭部も黒いため、容易に見分けることができます。

生態

デザートヘアリースコーピオンは、地中に最大2.5mもの深い巣穴を掘って生活します。また、湿った岩の下などで見かけることもあります。夜行性であり、昼間は巣穴や石の下に隠れて過ごし、夜になると活動を開始します。肉食性で、昆虫、クモ、他のサソリ、小型の脊椎動物などを捕食します。オオムカデは、デザートヘアリースコーピオンの競争相手であり、同時に天敵でもあります。また、トカゲやフクロウなどもデザートヘアリースコーピオンを捕食します。

刺激を受けると攻撃的になる性質があり、繁殖期は特に決まっていません。6ヶ月から12ヶ月という長い妊娠期間を経て、一度に25匹から35匹の仔を産みます。生まれた仔は、最初の脱皮を終えるまでの1週間から3週間ほど、母親の背中にしがみついて過ごします。その後、4回から6回の脱皮を繰り返し、4年ほどで成体になります。寿命は長く、野生下では7年から10年、飼育下では15年から20年生きるとされています。

毒性

デザートヘアリースコーピオンは中型のサソリですが、毒性はそれほど強くありません。一般的に、刺されたときの痛みはミツバチに刺された時と同程度であると考えられています。毒の半数致死量は168mg/kgです。ただし、まれにアレルギー反応を引き起こし、呼吸困難、腫れ、長時間の痛みなどを伴うことがあります。しかし、毒そのものは致命的なものではありません。

脚注

スナサソリ科 - かつて本種が分類されていた科

関連項目

サソリ
* スナサソリ科

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