デジタルマイクロカセット

デジタルマイクロカセットについて

デジタルマイクロカセットは、オーディオ用磁気記録テープの一つで、主にボイスレコーダーとしての利用を目的に設計されました。この規格はソニーによって開発され、同社の製品以外では流通していないため、非常に独自性のある技術です。デジタルマイクロカセットは、マイクロカセットのデジタルバージョンとも言われ、デジタルオーディオテープ（DAT）よりもサイズが小さく設計されています。

特徴と使用目的

デジタルマイクロカセットは、その小型設計にもかかわらず、ステレオデジタル録音が可能であり、音質においても一定の評価を受けていました。特に、会議やインタビューの録音用途としては、当時のICレコーダーに相当する存在でした。しかし、DATのようなヘリカルスキャン方式を採用しているにもかかわらず、頭出し機能が利用できないため、特定のトラックへ直接アクセスすることができないという欠点もありました。

1992年に発表された第一号機「NT-1」からすぐに発売された後、1995年に後継機「NT-2」が登場しましたが、商業的にはそれほど大きな成功を収めることはできませんでした。ソニーの側では、ICレコーダーが急速に普及していた時期と重なることや、10万円以上の価格設定により、消費者にとって経済的負担が大きかったことが影響しています。

テープの仕様

デジタルマイクロカセットのテープは、切手サイズの小さな磁気テープを使用しています。テープの幅は2.5mm、厚さは約5μmであり、録音時間は往復で60分、90分、120分の3種類が提供されています。テープの速度は6.35mm/s、テープの長さは約18mです。このテープには、誤消去防止の爪も取り付けられており、データの安全性には一定の配慮がなされています。

デジタルマイクロカセットは通常のトラッキング方式を使用せず、データを重複して読み出して、メモリー内で再構築する「ノントラッキング方式」を採用しました。この特異な方法により、小型化と高信頼性の両方を実現しました。

レコーダーとその機能

デジタルマイクロカセットに関連するレコーダーは、NT-1とNT-2の二つのモデルのみが発売されました。NT-1はオートリバース機能を持っていないシンプルなモデルでしたが、後継機のNT-2ではオートリバース機能や音楽再生に特化した設計が施されていました。NT-2は、さらなる機能性を持ち、リモコン付きのヘッドフォン操作も可能でした。

商業的な展開とその後

NT-1とNT-2の発売後、デジタルマイクロカセットの製品群は1999年末まで生産され、2004年に終了しました。また、関連するテープの流通も2011年に停止されてしまいました。

加えて、デジタルマイクロカセットは、そのサイズから「量産されている世界最小のテープ」としてギネスブックにも掲載された1例があります。このように技術的な面からは革新的でしたが、経済的な要因も含めた市場での競争により、最終的には消費者に定着することなくその役割を終えました。

デジタルマイクロカセットやそのレコーダーには、特定の市場向けの利点があったものの、時代の流れからは早々に姿を消すこととなりました。

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