デストロイヤー・カービン

デストロイヤー・カービン：スペイン法執行機関を支えた小銃

デストロイヤー・カービンは、20世紀初頭のスペインで開発されたボルトアクション式小銃です。9x23mmラルゴ弾を使用し、スペイン警察、刑務所、グアルディア・シビルといった法執行機関で広く採用されました。本銃は、既存の火器を更新する目的で1920年代初頭に設計され、エル・ティグレライフル（ウィンチェスターM1892のコピー）の後継として活躍しました。

開発と製造

デストロイヤー・カービンは、モーゼルM1893（スパニッシュ・モーゼル）を9mmラルゴ弾仕様に小型化した設計となっています。機関部は可鍛鋳鉄製、弾倉口はプレス加工と、当時の技術を反映した構造です。給弾は、9mmラルゴ弾仕様の拳銃であるベルグマンM1896用の6発または10発装弾の着脱式箱型弾倉を使用していました。

興味深いことに、デストロイヤー・カービンには前身となるモデルが存在します。それは、1920年に軍需品取扱業者であるイホ・デ・B・カステルス社が発表した「モンセラート・カービン」です。カタルーニャの民兵組織ソマテンの守護聖人にちなんで名付けられたこのカービンは、著名な小火器設計者であるD・フアン・ヘノバ大佐の設計に基づいていました。カステルス社はガスタニャーガ社と製造契約を結び、ガスタニャーガ社は「デストロイヤー」というブランド名でこれを生産しました。「デストロイヤー」は、ガスタニャーガ社が1914年に自動式拳銃を発表した際に初めて使用したブランド名で、駆逐艦を意味する英語に由来します。

ガスタニャーガ社はモンセラート・カービンに対して改良を加え、着脱式弾倉の採用など、いくつかの変更点を導入しました。1924年にはこれらの改良に関する特許を取得しており、デストロイヤー・カービンとして流通した銃器の大部分は、これらの改良が施された設計に基づいています。

配備と歴史

デストロイヤー・カービンは、ミゲル・プリモ・デ・リベラ将軍による軍事政権時代（1923年～1930年）を通じてスペイン全土の法執行機関に広く普及しました。ソマテンの解散後も、自然保護官や猟師などによって使用され続けました。スペイン内戦（1936年勃発）によって多くのメーカーが製造を中止する中、ガスタニャーガ社も生産を停止しますが、後にアイラ・ドリア社が「デストロイヤー」ブランドを買収し、改良を加えた上で生産を再開しました。

1970年代に入ると、法執行機関ではエスタラZ-62短機関銃への更新が進み、1976年にデストロイヤー・カービンの生産は最終的に終了しました。製造された総数は、製造番号から推定して約4万～5万丁と推定されています。フランシスコ・フランコ政権下では、グアルディア・アサルトやポリシア・アルマダなどでも広く使用され、都市部の法執行機関での退役後も、グアルダス・デ・カンポ（辺境・森林警備隊）などで長らく使用されました。

派生型と輸出

デストロイヤー・カービンは、9x19mmパラベラム弾仕様の輸出用モデルも存在したと言われています。.38ACP弾や.38スーパー弾仕様のモデルも販売されたとされています。

ウェーベルの消音カービン

ベトナム戦争中、元OSSエージェントであるミッチェル・ウェーベル三世は、デストロイヤー・カービンをベースとした特殊任務用消音銃の開発を試みました。彼は、第二次世界大戦中に使用されたデ・リーズルカービンを参考に、その欠点を改良した「近代的なデ・リーズル」を目指しました。機関部の強度を考慮し、9x19mmパラベラム弾が採用されました。

ウェーベルは少なくとも5種類の試作銃を作成し、そのうちの一つはベトナム共和国陸軍歩兵学校でデモンストレーションが行われました。1969年には、10丁程度の消音デストロイヤー・カービンがアメリカ陸軍による実戦試験のためにベトナムに送られました。スペイン製デストロイヤー・カービンの供給が枯渇したため、アメリカ陸軍はレミントンM788ライフルを原型とした新たな9mm消音カービンを開発しました。

デストロイヤー・カービンは、スペインの法執行機関で長きに渡り使用された実用的な小銃であり、その歴史と派生型は火器開発史において興味深いものです。

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