デスルフロコックス目

デスルフロコックス目

デスルフロコックス目（Desulfurococcales）は、古細菌の中でもクレン古細菌に属するテルモプロテウス綱に分類される微生物のグループです。この目の最大の特徴は、その類まれな超好熱性にあります。生息環境は摂氏90度を優に超える極めて高い温度域であり、多くの種が摂氏100度を超える過酷な条件でも活発に増殖することが知られています。

特徴

デスルフロコックス目の細胞は、一般的に円盤状または球菌の形態をしています。いずれの種も超好熱菌として分類され、摂氏90度以上の極限的な高温環境に生息しています。主な生息地は深海の熱水噴出孔周辺などの海洋環境ですが、温泉など陸上の高温環境からも分離された例があります。

代謝に関しては多様性が見られますが、大部分の種は偏性嫌気性であり、酸素が存在する環境下では生育できません。ただし、例外として、Aeropyrum属は偏性好気性、Pyrolobus fumariiは通性微好気性を示すことが知られています。多くの種は、エネルギー獲得のために水素ガスや有機物を分解し、その過程で電子受容体として硫黄、硝酸塩、チオ硫酸塩などを利用します。生育に適したpH範囲は摂氏5.5から7.5程度と比較的狭く、極端な酸性やアルカリ性を好む種はこの目には含まれません。

分類

デスルフロコックス目の分類は、主に16S rRNA遺伝子配列の系統解析結果に基づいて行われています。この目には、現在、デスルフロコックス科（Desulfurococcaceae）とピュロディクティウム科（Pyrodictiaceae）の二つの科が存在します。

両科ともに超好熱菌ですが、好む温度域には違いが見られます。ピュロディクティウム科に属する種はより高い温度を好み、至適生育温度は概ね摂氏100度を超えます。一方、デスルフロコックス科の種の至適生育温度は摂氏80度から95度程度と、比較的低い温度で最適な生育を示す傾向があります。

デスルフロコックス科 (Desulfurococcaceae)

デスルフロコックス科には、以下のような多くの属が含まれています。

“Acidococcus”属
Aeropyrum属（例：_A. pernix_）
Desulfurococcus属
Ignicoccus属
Ignisphaera属
Staphylothermus属
Stetteria属
Sulfophobococcus属
Thermodiscus属
Thermogladius属
“Thermofermentum”属
Thermosphaera属

ピュロディクティウム科 (Pyrodictiaceae)

ピュロディクティウム科は、極めて高い温度耐性を示すことで特に注目されてきました。この科には現在、正式に発表されている3属5種が含まれます。

この科に属する一部の種は、かつて生物界における最高増殖温度の記録を保持していました。具体的には1984年に発見されて以来、2008年にMethanopyrus kandleriによって記録が更新されるまでの間、最も高温で増殖できる生物として知られていた種がこの科に存在しました。

特に有名な種として、Pyrolobus fumariiが挙げられます。この種は摂氏113度という非常に高い温度で増殖が可能であり、さらに摂氏121度、1時間のオートクレーブ滅菌にも耐えるという驚異的な耐熱性を持つことが報告されています。また、16S rRNA配列から暫定的に“Geogemma”属に分類されるStrain 121も、摂氏121度での増殖が可能であるとされています。

ピュロディクティウム科に含まれる属は以下の通りです。

“Geogemma”属
Hyperthermus属
Pyrodictium属
Pyrolobus属（例：_P. fumarii_）

デスルフロコックス目は、地球上の極限環境における生命の多様性や、生命が存続しうる温度の上限を探る上で、重要な研究対象となっています。

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