デバイ

デバイ：分子の極性を測る単位

デバイ（記号：D）は、分子の電気双極子モーメントを表す単位です。電気双極子モーメントとは、分子内で正電荷と負電荷の中心が一致しないために生じる、電荷の偏りを表す物理量です。この偏りの大きさを表す際に、デバイがよく用いられます。

この単位は、オランダの物理化学者ピーター・デバイに因んで名付けられました。デバイ自身、分子の極性に関する研究で大きな功績を残しており、その業績を称えて単位名として採用されています。

デバイは国際単位系(SI)やCGS[[単位系]]では正式な単位として認められていません。しかしながら、物理化学、特に分子の性質を扱う分野では、デバイを用いることが非常に一般的です。これは、SI単位系で表される電気双極子モーメントの値が非常に小さく、扱いにくいことが理由として挙げられます。デバイを用いることで、より簡潔で分かりやすい数値で分子の極性を表現できるためです。

1デバイは、静電単位系(cgs)では10⁻¹⁸esu・cmと定義されます。SI単位系との換算では、正確には(1/299792458)×10⁻²¹C・mとなり、およそ3.33564×10⁻³⁰C・mに相当します。

原子[単位]]系では、1原子単位]は約2.54D、または約8.47×10⁻³⁰C・mとなります。一般的な[[分子の電気双極子モーメントは数auのオーダーですが、これをSI単位で表現すると非常に小さな値となるため、デバイを用いることで数値の取り扱いが容易になります。

例えば、水分子は比較的大きな電気双極子モーメントを持ち、約1.85Dです。一方、二酸化炭素分子は、対称的な分子構造を持つため電気双極子モーメントは0Dとなります。このように、デバイを用いることで、分子の極性の違いを明確に比較することができます。

デバイは、分子の極性を表すだけでなく、分子間相互作用の議論にも重要な役割を果たします。極性分子同士は、電気双極子モーメントによる相互作用（双極子-双極子相互作用）によって引き合い、分子間力に影響を与えます。この分子間力は、物質の物理的性質、例えば沸点や溶解度などを決定づける上で重要な要素です。

まとめると、デバイは国際単位系では採用されていないものの、分子の極性を簡潔に表現するために広く用いられている実用的な単位です。その値は分子の電荷分布の非対称性を反映しており、物質の性質を理解する上で重要な指標となります。デバイを用いることで、分子の極性や分子間相互作用についての議論が容易になり、物理化学の様々な分野で活用されています。

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